びっくりした甥っ子氏。

倉沢トモエ

びっくりした甥っ子氏。

 大学一年の夏休み。相変わらず山と田んぼしかない村にある実家に帰省した。


「1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9! 10!」


 庭でアリを数えている甥のタイキくん三歳、10まで完璧だ! 天才か!


「11! 12!」


 おっ?


「15! 13! 14! 20!」


 文字列ヤバくなってきた!


「100! 111! 1000!」


 どれだけアリがいるんだよ、うちの庭!


「ああやって生き物みてるからすぐ泥んこになるんだけどね」


 姉がカルピス持ってきた。


「この頃、汚すとすぐに『◯◯見て、びっくりしちゃった!』って言い訳するようになったの。こないだは『バッタ見つけて、びっくりしちゃった!』」


 この田舎で生き物を嫌わず、接しているとは頼もしい。


「『カタツムリ見つけてびっくりした! 3メートル!』」

「3メートル」

「お母さん! 見て!! って言うから行ってみたら、」


 3センチほどだったという。


「単位というものがあると、そこは理解しているんだ」


 天才か。


 俺が感動していると、タイキ氏は呼びにきた友だちの家に遊びに行ってしまった。


   * *


 ところでタイキ氏が遊びに行ったあと、両親が妙な話をしていた。


「村のあちこちで池の掃除をしようとするとね、」


 掃除を。


「苔がなんでかきれいになってるの」


 苔を食う生き物って、魚? エビ? そいつらが大発生したとか?


「いや、一晩できれいになるのおかしいでしょ。小学校とかお寺とか、日時決めて池掃除に集まると、あれだけあった苔がないのよ」


 有志の善意の人のしわざとも思われない。


「たいへん!」


 そこにタイキ氏、友だちといっしょに走ってきた。泥だらけだ。


「コウちゃんのお家の池に、大きいカエルいて、びっくりしちゃった!」

「池のコケ食べてた!」


 カエルは、コケ食べるのか?


「あははは、どのくらい大きいの?」

「5メートル!」


 俺を含む大人たちは、そのほほえましさに笑いがこぼれたが、ん? 池? コケ? 5メートル?


 まさかな。

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びっくりした甥っ子氏。 倉沢トモエ @kisaragi_01

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