筋肉
Totto/相模かずさ
筋肉を考える
世の中には二種類の人間がいる。
そう、筋肉がつく人間とつかない人間だ。
だから俺の腹が割れてないのも、腕の筋がむきっとしてないのも、背中の肩甲骨がぐーッと張り出さないのもそれは仕方ないことだ。
「ぷにっ」
「やめい」
寝巻きに着替えている途中に腹肉を摘まれ、擬音までつけられて、俺は真奈美の手をペシっと振り払った。
妹の真奈美はせせら笑うように俺を、いや俺の腹を見る。
「お兄ちゃん、お腹ぷにぷにですねえ」
ほんの少し俺より高い身長、陸上部の期待の星とかで毎日トレーニングしているその足は俺なんかより余程ムキムキだ。
「脳まで筋肉の中学生女子に言われたくないですー。それより明日から定期試験だろ? わからないとこあったら教えるから教科書持ってこいよ」
「そうそう、それでここに来たんじゃん! まさ兄に聞いてもなにも教えてくれないし、はる兄教えて!」
中二の真奈美に勉強を教えるのは高一の俺にとって基礎を一から覚え直すのにちょうどよく、これのおかげで成績がちょっと上がったのは秘密だ。
「真人は人にものを教えるの苦手だからな。いいよ、どこ」
俺の双子の兄、真人は頭はいいんだけどそれを人に伝えるのが苦手。なので真奈美の相手は専ら俺春人だ。
「これ、筋肉の仕組み」
今筋肉のことについて考えていたところでこれかい。
真奈美に渡された教科書をパラパラめくると、習った記憶が蘇ってくる。
確かに二年の時にやったな。
「理科か、それは名称を覚える方が先だな」
一夜漬けはどうかとも思うけど、就寝までの一時間付き合って明日の試験のためにと部屋に追い返した。
成長痛も感じたことなく、身長も158で止まってる俺。双子なのに真人は175ある。
真奈美だってもう160越えてるんだよな。
どうか、寝て起きたら身長が伸びてますように。
その願いが叶うのは一年後。
177まで身長が伸びたら、お腹周りもスッキリして腹筋も割れた。
筋肉 Totto/相模かずさ @nemunyo
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