今、また始めたいんだ。

冥沈導

付き合い始めたばかりのように

「……ずっと、忘れられなかった? 私が?」


「ああ」


 丸刈り頭の青年、品川しながわりょうは前を見据え、運転したまま続ける。


「高校を卒業して、何となくお前と別れてから。違う人と付き合った」


「うん……」


「だけど、誰といても、何をしていても、相手とお前を重ねてしまう自分がいた」


「うん……、それは、私もおんなじ」


 二人は、お互いが全て初めてだった。

 初めてのキスも、デートも、そして。痛いけど幸せだった交わりも。


 どこかで、互いを、求めていた。


「……責任を取らせてくれと言ったのを、覚えているか?」


「うん、覚えてるよ。忘れられるわけないじゃん」


「……あの時は、流れで言ってしまったように聞こえたかもしれないが、俺は——」


 信号が赤になり、軽トラックは止まった。

 真っ直ぐな瞳が、あかりを捕らえる。


「ずっと前から、お前が好きだった」


「……ずっと前って?」


 信号が青になり、涼太は前を向き、軽トラックを発進させた。


「……幼稚園」


「幼稚園!? え!? もしかして!? それからずっと!?」


「……ああ」


 涼太の顔がどんどん赤くなっていく。


「涼太、トマトみたいだよ?」


「……」


「そういえばさ、涼太ん家のトマト、よく縁側で食べたよねー」


「ああ。お前は殺人事件みたいに、服を真っ赤にしていたな」


 涼太はふっと笑った。


「だってー、新鮮だとむしゃむしゃーって食べたくならない?」


「ならねぇよ」


「そうかなー? また食べたいなー」


「……今度はいつでも食べれる」


「え? あ、そっか。でも、え? さっきのってプロポーズ!?」


「……そのつもりだ」


「え、えぇー!? 急すぎない!?」


「なら。また恋人から始めさせてくれ。会えなかった数年を、埋めたい」


「……うん。それなら。改めて、よろしくお願いします」


 灯は小さく頭を下げ。


「ああ」


 涼太は少しだけ口元を綻ばせた。



 




「そういえば、涼太、また背ー伸びた? 今いくつー?」


「190」


「でかっ! 巨○兵か!」

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今、また始めたいんだ。 冥沈導 @michishirube

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