第40話 もう付き合えばいいのに

 時間が経つのは早く、もう放課後。

 夢さんに放課後家に誘われているせいで、今日の授業の内容は全く入ってこなかった。

 それは夢さんも同じだったらしく、授業中先生に問題の答えを聞かれたとき全く別の問題を答えたりしていた。

 お互い変に緊張しているせいで、俺たちがいる空間だけ異様な空気になってる。

 

 が、そんな中。


「何してるんだよ」


 空気を一切読まず、雷也が荷物を持って俺の机の前に来た。

 

 放課後にあることをなにも言ってないから、一緒に帰るつもりなんだろうか。


 これから夢さんの家に誘われてるって言うのは……絶対言わない方がいい。


「あなたこそなに」


「あっ桜井様すいません」


 夢さんの一喝で、雷也はトボトボ俺の元から去ってしまった。


 適当に察してもらって助け舟を出してほしかったけど。今回のことは二人だけの秘密にしたいらしい。


「朝比奈くん。覚えてる?」


 緊張して深くは聞けないが、家に誘われていることに違いない。


「うん。覚えてる」


「すぐ私の家に直行する? それとも、どこか寄り道する?」


 この緊張したまま寄り道したら、多分おかしくなっちゃう。


「寄り道してたらすぐ夜になりそうだし、直行したいな」


「わかった……。あ、安心してね。家に呼んだのって変なことするわけじゃないから」


 突然たどたどしくなり、どうしたのかと気になって隣を見てみると。

 夢さんはさっきまでの緊張した様子と程遠く。両手をわしゃわしゃ動かして、俺に身の潔白をアピールしてきてた。


 絶対なんか隠してるじゃん。

 ……なにをするつもりなんだろう?


 一人動揺している中。

 俺たちの元に雷也とは別にもう一人やって来た。


「あ、夢ちゃん。さっきまでここら辺にいたはずのらいくんどこに行ったのか知らない?」

 

「あの人ならよくわからないけど、教室から飛び出て行ったよ」


「…………よくわからないんだ」


「うん。わかんなぁ〜い」


 隣からさっきあったことは絶対言うな、という圧を感じる。


 こ、怖ぇ……。


「そっか。まぁ待ってくれてるだろうしいっか。……というか気になったんだけど、なんで二人はまだ仲良く椅子に座ってるの?」


 え。俺の目を見られても困るんだけど。


「な、仲が良いから?」


「そう。私たちは仲が良いの」


 夢さんは誤魔化せてると思って、自信満々に便乗してきてるが。


 目の前にいる人はニヤニヤしてる。


「もう付き合えばいいのに」


「「…………」」


 おい。この空気どうすればいいんだよ。


「じゃ、じゃあ私はらいくんが待ってるから……」


 え、ちょっと助けてくれたっていいと思うんだけど。


 俺の考えは夢さんの友人には届かず。

 

「そろそろ私たちも行こっか」


「……うん」

 

 絶妙な空気のまま、夢さんの家に向かった。

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隣のS級美少女が話しているネットで片思いしてる人、完全に俺のことなんですが でずな @Dezuna

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