第39話 変わりゆく関係

 落ち着かない心を無理やりなだめるが、落ち着かない。もう何度落ち着かせようとしたものか。

 自分でもおかしいのはわかってる。

 それもこれも全部、ピンク色で包まれ、女の子らしいものがたくさんある部屋にいるせいだ。


 人生で異性の部屋に、異性と二人っきりなんていう状況になったことなかった。が、今そうなってる。


 俺が喋らないせいで、夢さんも空気を読んでくれているのか沈黙に包まれていたが。

 

「今日、親の帰り遅いんだよね」


 突然放たれた言葉に、余計喋りづらくなった。


 あれ……なんでこんなことになったんだっけ……?



  ▲▼▲▼



 今、久しぶりにドリームと長時間チャットしてる。

 と言っても、旅行から帰ってきた後の夜なので久しぶりな感じがしない。


 ドリーム:というわけで、ずばりショウは異性にガツガツ来られたら嬉しい方? 嫌な方?


 いつもならバカなノリをしてる頃だけど。

 なぜか恋愛の話になってる。……まぁ、何の話をしても楽しいからいっか。

 

 ショウ:女の子からガツガツ来られて嫌なことなんてないと思うんだけど。逆にドリームはどうなん?

 ドリーム:同意見

 ショウ:だよな。ま、ガツガツ来られすぎたら嫌だけど

 ドリーム:あぁ。よく考えたら、ぼっちのショウはコミュ力ないから参考にならないわ……

 ショウ:おい

  

 最近、ドリームの様子がおかしい気がする。

 今してきたチャットみたいに、からかいが多くなった。前までは、俺がからかって面白がってたのに。いつの間にか立場逆転しそうなんですけど。


 とりあえずチャットを削除しまくってるスクショを貼っておこう。


 俺はドリームの反応が楽しみで画面に張り付いていたが。

 

「あ」

 

 返ってきたのは、俺が一度やらかしてチャットを消したスクショだった。


 ドリーム:なに?

 ショウ:マチガエタカモ

 

 これを追求されたらまずい。


 ドリーム:今すぐ溜めてるスクショを削除するように

 ショウ:うっす

 ドリーム:スクショプリーズ


 逃げ場はないのか。 

 俺は渋々「ドリーム羞恥ファイル」を削除した。


 ショウ:これでいい?

 ドリーム:うむ。よろしい


 まぁ、削除したって復元できるから痛くも痒くもないんだけど。

 

 ドリーム:それで……なんの話してたっけ?

 ショウ:グイグイ来る異性がどうなのか、とかそんな感じの話。けど、その話はドリームが俺のことを煽って終わった

 ドリーム:事実を言ったまで

 ショウ:ほう。まるで俺を知ってるようなことを言うじゃん 

 

 慌てて否定してくるかと思ったが。

 返ってきたのは、ニコッと笑ったネコのスタンプだった。


「え、えぇ……」 


 明確なことは一言も言ってないけど。

 ノリでやってるだけかもしれないが、気づいてると思って話したほうが良さそうだ。

 

 ドリーム:確認なんだけど、ショウが好きなのはグイグイ来る女の子で間違いない?

 ショウ:あぁ。そうだけど


「なんでこんなこと確認するんだ?」


 口に出した疑問に答えるように、スマホからラインの着信音が鳴った。


 来ていたのはドリーム、桜井夢さんからの一通のチャット。


 【明日の放課後、よかったら私の家来ない?】


 うん。ド直球すぎるだろ。

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