調査中の遺跡で発見された人骨は、ごく最近のものだった…。頭蓋骨に粘土を用いて、生前の顔を復元する「復顔」。復顔師の師弟コンビに、骨は何を語るのか。同じころ、警察は、とあるアパートで発生した酸鼻をきわめる殺人事件の謎を追っていた。逮捕された被疑者が口をつぐむ理由とは?
事件の謎をかき乱す、人々の繊細な心のひだ。ときおり読み手をくすっと笑わせてくれる、復顔師師弟のやりとり。温泉宿にわだかまる薄暗い闇…。復顔師コンビはもとより、警察の捜査員ひとりひとりに至るまで描き込まれた人間味と、事件の関係者がほのめかす影。なにより、脳天から熱した鉄の串でもぶちこまれたような衝撃的な事件は、横溝正史の系譜と言ってよいのではないかという印象を受ける。一方、事件そのものの骨組みは非常に細やかで、作者様が相当に苦心して組み立てられたことが垣間見える。
果たして、この事件に救いはあるのか。
怪奇ミステリーに触れてみたい方は、ぜひ。全身が震えます。