マッスルレボリューション!~やはり筋肉は全てを解決する!~

黒井羊太

筋肉は全てを解決する!!

 ある朝。TVのアナウンサーが爽やかな笑顔で語り始める。

「おはようございます! 爽やかな朝です、本日も筋肉を鍛えて参りましょう!」

 言うなりスーツを脱ぎ捨て、ムキムキのボディで音楽に合わせて体操を始める。

「レッツマッスル! マッスルは国民の義務! いえ、人間の義務! いやいや、生命の義務です! さあ、鍛えましょう!」

 画面越しでも汗くささが伝わりそうな程の内容。その動きに合わせて、地震が起こる。このTVを見ている人たちが一斉に体操を始めている為だ。

「レッツマッスル! 筋肉革命万歳! さあ皆さんもご唱和下さい!」

「「レッツマッスル! 筋肉革命万歳!」」

 これが毎朝の光景である。


『筋肉は全てを解決する』

 停滞していた社会を大きく変革したのはそんなネットミームだった。事実として当時の現代人は筋肉が足らず、結果として自分に自身が持てない、体も弱々しくなる、いざという時に身を守れないなどの問題が多々発生していた。

 そこで筋肉教祖様が立ち上がり、誰でも出来る筋トレ方法を考案し、徐々に社会を明るく改革していったのだった。

 結果として皆が一様にハキハキと喋り、爽やかさを手に入れ、毎週末は庭でバーベキューである。

 世界は筋肉革命、マッスルレボリューションによって改善されたのだ!


「筋肉は全てを解決する……か……」

 小さく呟く男が一人。人目を忍ぶようにして路地裏へと消えていった。


 その先では男女が何人もいた。いずれも筋肉質で、マッチョという言葉が相応しいが、皆一様に似つかわしくない暗い顔をしていた。

「町の様子はどうだ」

「あぁ、健康そのものだ。問題なんて見あたらない」

「くそう、俺達の居場所が無くなったってのに……」

「言うな。これから私達の計画は最終段階へ入る!」

 リーダーの言葉に皆はざわめく。

「我々はこの健康的な社会を構成していくにあたって切り捨てられた、いわば暗部だ! この欺瞞に満ちた世界を、筋肉によって破壊する!」

「「破壊! 破壊!」」

「我ら筋肉インストラクターの地位を取り戻すのだ!」

 おおおおおおおおおぉぉ!!

 地響きのような声。そして各々が武器、など持たず、己の肉体のみで計画を実行しに走る!

 彼らは筋肉の伝道師。しかし誰もがその方法を身につけてしまえば、誰も見向きもしなくなってしまったのだ。その奪われた地位を、筋肉で以て取り戻す!

 まさにマッスルレボリューションがこれから始まるのであった!!

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マッスルレボリューション!~やはり筋肉は全てを解決する!~ 黒井羊太 @kurohitsuji

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