宏樹君の休日6
代官坂のぞむ
第6話
「オーナー? みうみうです。おつかれさまー」
名前は、みうみうというらしい。スマホの会話からそんなことがわかるが、手を握られて逃げられない宏樹は、どんな目に合わされるかと気が気ではない。
「ロンさんに頼まれた荷物なんですけど、トラブっちゃって、まだ渡せてないんですう。今? お店です。横取りする奴っぽいのが来たんで、逃げて来ました」
みうみうは、ちらっと宏樹を見て続けた。
「いいえ、一緒に逃げてきた子と二人でいます」
もしかして口封じのために、と恐ろしい考えが浮かび、宏樹の額には冷や汗が浮かんできた。
「はい、待ってまーす」
みうみうはスマホを置くと、また申し訳なさそうな顔になった。
「ごめんね。受け取りの人が来るから、もうちょっと待ってて。あ、喉乾いたよね」
みうみうは手を離すと、店の入口横に置いてある冷蔵庫のガラス扉を開けて、緑色の缶を取り出した。
「セブンアップ飲む?」
「の、飲んだことないです」
「そう? 日本じゃあんまり見ないからね。うちはロンさんのツテで輸入してるんだけど」
みうみうは、プシュっと缶をあけ、カウンターに伏せてあったグラスを二つ取って注ぐと、一杯を宏樹の前に置き、もう一杯を立ったままぐっと飲み干した。
「くー。このレモン味がたまんない。今どきセブンアップが飲めるなんて、ラッキーだよ。ラッキーセブン。あ、でも帰れなくなっちゃってるから、アンラッキーセブンか」
けらけらと笑う、みうみうの後ろに店の入口が見えるが、宏樹には、そこを走り抜けて逃げられる自信はなかった。
宏樹がグラスを手に取るのと同時に、ギイっと音がして店のドアが開き、短髪で背の高い男が入ってきた。男の鋭い目付きに、またもや宏樹は、胃がぎゅっと縮むのを感じる。
「あれえ? ロンさんが自分で来たんだあ。珍しー」
みうみうが振り向いて手を振るが、男は宏樹を見ながら静かに言った。
「そいつは誰だ?」
宏樹君の休日6 代官坂のぞむ @daikanzaka_nozomu
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