第6話  笑顔が戻る様に…。

 何時迄電気が供給され続けるのか、関東の主要発電所の福島が停まって居る、他の火力も被害無しとは行かんだろう、沿岸に設置されて居る火力発電所もただでは済んで居ないだろうから。


 何で津波が予想される海岸沿いに原発を設置したんだ、そうは思わなかったでしょうか?、でも今回は原発に眼が行く二次被害の大きさに、未だに故郷へ帰れない方も居られる地震そのもので被害は受けて居ないのに、確かに二次被害こそ無いが火力も被害を受けているただ報道されないだけ、今此の科学が発達と言うが、機械化文明の始まりの頃と同じで我々は蒸気機関の世界に生きている、原発にしろ火力にしろ投入される莫大なエネルギーの大半を捨てない限り恩恵を受けられない。


 貴方の家庭にどれ位電気が届いて居ると思われてますか、エネルギー100を投入して其の内どれ位を使用出来ているか?、70、60、50ですか?、一般的には僅か36%、送電ロスそう言われる方も居られます、送電ロスは10%以下でしか無い、発電時のタービンを回す蒸気これを復水化する為に莫大な熱を海中投棄此れで60%近くを棄てて居る、其れだけを棄てても干上がらぬ場所其れが海、だから沿岸に建設される、実際に被害を受けて居ります火力発電所も…。


 いけませんね直に脱線する、此れも悪い癖…。


 先ずは水か…、幸いお茶の2Lペットボトルが複数有る大気に触れない限り水道水の塩素は抜けない、ホースにて大気に触れない様に注ぎ汲み置けば短期なら保存可能だろう、取り敢えず膨張分も計算し少し潰して入れ冷凍庫で凍らせて置く、電気が停まっても冷蔵庫の保冷材も兼ねられる、長期間は無理だか短時間なら何とか為るだろう。


 後は…、暖房と照明、情報と通信手段か、後は…、何れ被災地へ優先して暖房や輸送の為燃料となる石油関連品、ガソリン、軽油、灯油、病院などの大型施設の暖房へ重油と言った所か…。

 供給制限受ける筈だよな…、如何するか…。


 ほら盆暗なオツム動かせよ、勉強は出来ないだろうが乞う言う時にだけは動くだろ?


 二階は暖房は灯油…、二階は使用停めさせる此の際だ余震の時にアイツの脚じゃ怪我されてもな、一階はガスだから燃料供給には差し支えないだろう、良かったな一階が石油ファンヒーターじゃ無くてアイツは石油の余熱に猛烈に電気喰うからな、ガスなら起動から継続運転中も最大でも100W以下だから、子供が小さいと火傷の恐れが有るから裸火の燃焼器は使えない…。


 何れにしても暖房、照明、情報、通信何れも電気が必要…、そうかホームセンターかカー用品店で未だ手に入るか?、普通は気付かんからなそんなもんが役に立つとは…。


 さて準備するか、未だ自分一人の時に其の状況に陥った時の事を考え、不安で泣いてる奴が居るのにノンビリしてられる訳も無いよな、まあ回避出来る所実演して見せるか其れが早道だな。


 問題は何処迄一台でカバー出来るかだ、足り無きゃ買い足せば良いだけの事、俺と同じ考えに辿り着く奴が近場にどれだけ居るかだな。


 作業時用の延長コード五メートルを車へ伸ばし、接続してリビングへ引き込む、照明、ファンヒーター、TV、携帯充電器を繋ぐ、冷蔵庫は如何したって?、其れは元々無理な相談だ例えば定格100Wだとしたら起動時に瞬間ほぼ倍の電力を必要に為る、だからペットボトルを凍らせた…、昭和初期の冷蔵庫は電気じゃ無い元々電気自体が全家庭に来ていた訳じゃ無い、裕福な家庭から恩恵に与れる、だから関東の電力会社名は最初は東〇電灯、一般家庭向けは白熱電球等に照明用で供給していた、今の便利な家電製品など在りはしない…。


 じゃあ冷蔵庫は?、そう思うだろう家電製品だと、冷蔵庫は電気屋で無く家具屋や大工と板金屋の職人の手に寄る物、板金屋と言っても車の板金屋じゃ無い、台所の流し台のシンク等手作りの時代は2ドア冷蔵庫で言う冷凍庫に当たる部分に氷屋より氷を購入、上段に氷を収納し冷気が降りて来る事で冷やすシンプルな物だ、氷は解ける木製のフレームの内側に板金職人が板金加工してその水が木部に触れぬ様に内側をステン板を加工張り付けしてドレン対策もして有る。


 おっと又逸れて仕舞ったか、要するに消費電力が大き過ぎてとてもじゃ無いが動かせないし、仮に動いたとしても継続できない、そう言う事だ一時的な停電は先述の氷に担わせる、生活用水は組み置いた浴槽の水、飲料水は解けた氷を使う勿論長期は無理だが乳飲み子のミルク作る位は賄える、風呂は沸かせば入れるし、仮に停電でも動かせるさ消費量の大きな部品の縁を切れば。


 さあテストだ、不安に押し潰されそうな顔が笑える様に、俺が其の地に向かう事に為っても中学生の娘達と力を合わせればきっと上手く行く!。


 車に向かいキーを回しACCの位置へ回し、負荷の掛かるスイッチは全てOFFにした勿論エンジンは掛けない、バッテリーの供給する電力で動かせる事をちゃんと解って貰う為に!


 宅内に戻り洗面所に入り配電盤を開けた、上手く行く、きっと上手く行く、そう自分に言い聞かせ主幹ブレーカを下げ宅内に供給されて居る電気を絶った、コードを引き込むためにシャッターは開けて有る、其処から街路灯の僅かな光だけが届いて居た。


 人間は本能的に暗闇を恐がる生き物、行き成り真っ暗な中に置かれれば恐怖するのも当然、況してや俺以外の者は電気が来て当然、明るくて当然な所で今迄暮して来た。


 俺は自身の跨る小さな相棒が照らす一筋の灯りだけ、人工の灯りが無く月と星の灯りの中をずっと一人で走って来た、転倒し走れぬ相棒を新月の中を星明りだけで何キロも押して帰った事も有る、そんなド田舎育ちこんなに明るいじゃ無いか、だが其れを求めるのはお門違いさ。


 被災地はこんな物じゃ無いだろう心苦しい気持ちが膨らんで行く、だが今は此の家族を先ずは不安から解き放たなければ為らぬ、俺にも頼れる身寄りは既に無い、そして身寄り亡き此の娘の手を引くと決めた日から今此処に居る者達が俺の身内全て守る者は俺一人、さあ見ものだ!。


 一つずつ不安を消して行こう、俺にしか出来無い事を、笑顔が戻る様に…。

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