第5話 心配するなとは言ったが
本当に迂闊だった、生まれつきハンデを持ちリハビリに耐え、兄を喪い、其の後天涯孤独に為った娘、此の娘は九十九里の海の傍で家族を失う迄育ち、家族との楽しかった思い出は九十九里の海の傍に居た頃しか無い、其の思い出の地が波に呑まれて仕舞って居た、そう其の場所が呑まれて仕舞う所が映像に流れて居たと教えて呉れた…。
普段はニコニコ笑って居る、とてもそんな生活を送って来たとは思えない…。
何時まで経っても頭の悪さと要領の悪さは変わらんのか。
でも直ぐに子を持つ母に変わり次々と質問がぶつけられる、子を持つが故か…。
「電池も懐中電気も売り切れだって!」
「お店から食料品も無く為ってるの!」
「小さな子が居るのに暖房が止まったら如何するの?」
「電気が止まったら如何するの?」
「何処に避難するのよ!」
「アタシ車も乗れないのよ…」
矢継ぎ早に言葉を浴びせられる、被災地の事を思えば何と贅沢な事を言って居るんだそう思って仕舞うが、次に出て来た言葉にトドメを刺される。
「私達に頼れるは人居ないのよ、子供達を連れて行く所も無いのよ!」
「・・・・・」
「応援に行くんでしょ、あそこに…」
手に取ったリモコンでスイッチを入れた、被災地の映像が流れる闇の中に紅蓮の火の手が上がって居る…。
今回先発隊は本社の社員さん達が向かう、長期戦に成る事は明白で交代要員は必要に為る、何時迄本社側で対応出来るだろう、取り決めは組まれて居る全く見知らぬ土地に向かうから、だが此処迄大きな災害は想定外だろう、本社の方々の中には私と同じ地方出身者が多いと聞く、先発隊の中には東北出身の方が志願されて居るだろう、でも大多数は見知らぬ土地に向かわれて、先発隊の方達の半数が交代で戻られる。
何故かと思われるだろうが全員が交代して仕舞うと次に向かう者は土地勘の無い者だけに為る、地域を覚えた者が半数残ればペアを組んで作業に直に当れる、行う作業其の物は何処に向かったとしても同じ、そして特殊な作業に成るとしても半数は其の経験した者が残り、先発で出た方達から引き継がれて行く。
「未だ解んないんだよ、本社の方達とウチの施工班の何名か向かうらしいがな」
「行かないの?」
「今の処はな、未だ俺の業務内容じゃ向かっても邪魔に為るしな」
「如何言う事?」
「被害が大き過ぎて被害状況の確認と復旧方法の作業計画が優先される、被害復旧迄は施工班の方達の仕事だよ」
「じゃあ行くのね!」
「だから未だ解らんて、当面は派遣される方達の業務で手薄になった所のカバーだよ」
「アタシじゃ子供を守れないの」
「心配するな!」
とは言ったが如何する、無い頭をフル回転させる…。
家の中に有る物、屋外に有る物、自家用車の中、社用車の中に積んで有る私物、ライフラインは今は止まって居ないが、何時停まるかは判らない、津波で被害受けた原発は停まった事は繰り返し報道されて居る、センセーショナルな映像に皆が眼を奪われるからだ、多分他の火力も停まって居ると考えた方が良い、沿岸に設置されて居る火力発電所もただでは済んで居ないだろう。
大人や高校生は理解して我慢出来るが幼い子も居る、生活に必要な物か、解決方法を其々結び付けて、何時呼ばれて家族を残して行くとしても困らぬ様にして置かないとな。
そう其の身の上を知った上で手を引いて行くと約束して居るから…。
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