必要筋力
大黒天半太
それは偶然の出来事
それは偶然だった。
むしろ、あり得ない、奇跡レベルの出来事だ。
低レベルを卒業したての若い冒険者・ジークベルトが、新人達に経験を積ませるべく、彼らを連れて、地下迷宮に入って、すぐのことだった。
浅い階層には珍しい、武装した
複数で現れる怪物には、ただ単に複数であるものと、集団として連携して強さを発揮するものがある。
低レベルゆえに集団戦闘が徹底している冒険者達は、隙を見せることはなく連携し、倍する数の
初心者向けの
足跡を確認しながら、追跡したはずだったが、痕跡を見失う。
もっと先に逃げたのか、最悪なのは…。そう思った瞬間、ジークはその場に踏みとどまった。
ジークは、
集団行動する
もし、その出入口を見過ごしてしまっていたら。敵は、前ではなく、後ろから来るかもしれない。通り過ぎたどこかで、油断した我々を後方から襲うタイミングを図っているのかも。
見失う直前の痕跡まで戻り、そこから全方向への探査を行って、擬装された出入口を見つけた。擬装された通路は、出入口から少しだけで、その奥は古くからあった部屋のようだった。
ジークは、
戸棚の陰と寝台の下から、革製のトランクが出て来た。
よかった。何かの収穫があれば、この非常事態の報告とともに、冒険者ギルドへ帰還することができる。
二つのトランクを滑らせ、引きずり出すだけで、苦労した。異常に重い。
盗賊にトランクの鍵開けを頼み、一つは開いたが、もう一つは失敗した。低レベルでは、仕方がない。一つが開いただけでも、良しとしよう。
最初に開いたトランクには、着替えの衣類とケースに入った
ケース入りなのは魔法のかかった武器か? マジック・ポーションの類であれば、これにも値が付く。
ジークは、トランクの錠の部分に自分の
こじ開けたトランクの中には、
しかし、問題はまだ続いていた。
重い。
魔法使いや盗賊が使う
それを作った人物は、装備する職業の筋力を見誤っているとしか思えない。
ジークは、初心者パーティの顔ぶれを見て、悩む。出物としては、各職業に配分できるいい按配だ。ただし、筋力が足りていれば。
これを、ギルドまで持ち帰らねばならない。誰が何を持って行くか。いつもとは、全く違う意味で、ジークはさらに悩んだ。
必要筋力 大黒天半太 @count_otacken
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