筋肉女子はフクロウの夢を見るか(KAC20235)

宮草はつか

筋肉女子はフクロウの夢を見るか

 私は中小企業で働くOLだ。趣味は筋トレ。

 ジムに通っておのれを鍛え、最近ではSNSで筋肉の素晴らしさを伝え始めた。

 

 だが、私は壁にぶつかった。投稿にいいねがつかない。フォロワー数も伸びない。


 いつからか、私は夢を見るようになった。ねずみたちに、自分の編み出した筋トレを教える夢だ。最初はひ弱そうだった鼠たちも、鍛えていくうちにたくましくなっていった。


 しかしある日、二人の青年が現れた。背から鳥のような翼を生やし、手には武器を持っている。そして私の鍛え上げたマッチョマウスたちを、次々と倒していく。


 悔しかった。私が育てたマッチョマウスたちが、こうも簡単に倒されていくとは。だが同時に、相手に興味を持った。マッチョマウスを打ち負かす彼らは、いったいどんな筋肉をしているのだろう。


「今日は夢鼠ゆめねずみが多いですね。次の扉で、最後でしょうか」

「開かんな。鍵が掛かっている」

「壁になにか書かれていますね」


『この先は筋肉を見せないと入れない部屋。己の筋肉のみで戦え!』


 扉の向こうには、私が育てた筋肉の中でも、最も素晴らしいスーパーマッチョマウスが控えている。


「……蹴破るか」

「夢に過度な刺激を与えてはいけません。ここは言うとおりにしましょう」


 一人は不服そうに目をすがめたが、もう一人の微笑む顔を見て、しぶしぶといった様子で息を吐いた。

 二人が、身を包む優雅な衣装に手を掛け、それを頭上へ高々と放り投げる。


 そこで私が見た、筋肉は――っ!!


「――はっ!?」


 目を覚ますと、自室の布団の中だった。

 なんだか、とても良い筋肉の夢を見た気がする。起き上がり、スマホを手に取る。SNSを開くと、昼間に訪れたふくろうカフェで撮った写真があった。私の上腕二頭筋に、二羽のフクロウが乗っている。


 投稿した写真には、いいねが十以上ついていた。


「明日も、筋トレ頑張ろう」


 夢を新たにして、私は再び布団の中にもぐりこんだ。

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筋肉女子はフクロウの夢を見るか(KAC20235) 宮草はつか @miyakusa

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