6.幸福の頂
あれから、俺たちは何度も何度も身体を重ね合わらせた。
お互いの傷を慰め合うように。
そうして、月日は流れた。
愛華とは、昨年結婚をした。
彼女に助けられてから2年が過ぎた頃、プロポーズをした。
今、俺は彼女の手を取っている。
病室で、声にならない悲鳴をあげている愛華。
俺の手にもそれに見合う痛みが走る。
いや、彼女の痛みに比べればこれくらい大したことはない。
病院に来て16時間。
昨晩陣痛が始まった。
いま、新たな命が生まれようとしている。
俺と愛華の子供だ。
「おぎゃあおぎゃあ」
と大きな声が病室に響く。産声・・・誕生の瞬間。
「愛華、お疲れ様。ありがとう」
「えへへ、うち超がんばったよ」
僕は、彼女の頭を撫でる。
憔悴しているが笑みを浮かべる愛華が愛しくなった。
「元気な女の子ですよ」
俺たちの間には、娘が生まれた。
俺が失ったものを、新しく愛華は与えてくれた。
深い深い愛で。
俺は、彼女に包まれていた。
「娘かぁ・・・宗吾。うちもしっかり愛してね」
そう、言った彼女は悪戯な笑みを浮かべていた。
「もちろんだよ、愛華」
俺は、これからも彼女の愛に溺れていくだろう。
だから、代わりに俺の愛で彼女を溺れさせよう。
「大好きだ、愛華。
これからもずっと」
「はい、うちも。宗吾が大好きです。
一生うちのそばにいてください」
僕らは、周りにたくさんの人がいることを忘れてそう誓い合った。
完
絶望の淵にいた俺を救ったのは、職場の後輩でした 天風 繋 @amkze
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