ビキニアーマーが強すぎる!

@shimanekoshippo

第1話ビキニアーマーと王国騎士団第四部隊


凶暴で狡猾な魔物の跋扈する世界。それは力を持たない一般人が生きていくには厳しい世界である。

力を持たぬ民の為に戦うのは、国が認めた冒険者だ。

剣術、槍術、弓術、体術、魔術、ありとあらゆる手段を用いて彼等は戦うのだ。

そんな世界で1人の男が、その圧倒的な実力で世の魔物を次から次へと倒し、その名を轟かせていた。


彼の名はユコル

人呼んで最強のマイクロビキニアーマー……




………………………………

………………

……



「何をしている!?早く怪我人の救助をするのだ!」


「隊長!もう回復ポーションがありません!」


「隊長!こっちは1人食われましたぁ!」


「チッ、仕方がない。救助出来る人だけ助けて一度撤退だ!」


共通の鎧を纏い、高品質な剣をその手に持ち、悪鬼どもと戦うのは王国騎士団第四部隊だ。


騎士団もやる事は冒険者と似たようなものだ。

違うのは給料の安定……それと、拒否権の有無である。


故に彼等は優秀だ。

どんな仕事でも請け負う為にあらゆる状況に対応出来るよう訓練が施されている。



だが、戦況は随分前から劣勢であった。何とか村人を救い出すのには成功したが、それは悪鬼達の罠だったのである。

彼等は囲まれてしまい、今まさに村人達を庇いながら奮闘していたのだ。


このままではマズイ。


そう思った隊長は独断で自らと新人の2人で団員を逃す為に囮になったのであった。


2人は懸命に戦った。

だが、余す事なく力を使い果たした彼等は等々疲れ果て倒れてしまった。



「終わり……か」


「畜生……最後に……酒飲みたかったですよ」


騎士の命である剣が折れては、流石の隊長も心が折れてしまった。


もうダメだ。


2人ともそう思い、抵抗をやめた。


「仕方がない。目的は果たせたのだ。我々は最後まで民を守ることが出来た……」


「俺との約束は、守ってないですよ?」


「ああ……すまんな。それはあの世で果たすことになりそうだ」


「じゃああの世で1番高い酒お願いしますよ」


「分かった」


会話が止んだ。

その瞬間、悪鬼の爪が勢いよく振り翳される。


……が、その爪はある者の胸筋によって遮られる事となった。


その者は仁王像を彷彿とさせる体躯に、その身に持て余すほどの筋肉。

その惚れ惚れするくらいに筋骨隆々とした身体を前にしてはどんな攻撃も無意味……

男の顔は歴戦の戦士を想起させる。


見た目だけなら最強の兵士と呼んで差し支えないくらいに男前なであった。


しかし、しかしだ。

その男、つけている装備が問題であった。


ほとんど全裸でマイクロビキニアーマー……


問題があるどころではない。 

問題しかない。


「あ、あんた何者だ!?」


驚いた様子の隊長が思わず声をかける。

まともに喰らって本来なら肉が抉れているはずの胸元は、何故か傷一つついてすらいなかった。

しかし、痒かったのか少しポリポリとかいた後、隊長の質問に彼は答える。


「……ただの通りすがりの老兵さ。おっと、今は冒険者なのだった」 


「そ、そうですか。因みにその装備は……」


新人が言いにくそうに聞く。

隊長も気になってはいたようだが、触れてはいけなさそうな話題だったので敢えて聞かなかったのだ。


「これ……か。………いや、今はそんな事を説明している余裕は無いな」


「それもそうだな……だが、名だけは聞いておこう」


「俺の名前はユコル。ただのビキニアーマー冒険者だ」


「そうか、私は王国騎士団第四部隊隊長ゴートだ。こっちの若いのはロキ。ユコル殿、申し訳ないが力を貸してもらえないだろうか?」


「元よりそのつもりだ」


ユコルは右腕に精一杯の力を込めて悪鬼に殴りかかる。

直撃を喰らった悪鬼はもちろん、その周辺にいた悪鬼達もソニックブームで死んでいた。


「な、なんて威力なんだ……」


「それより、周りの悪鬼達はボロボロなのになんで俺達にはダメージが無いんですかね?」


「分からん……ユコル殿が何かしてくれているのだろうが……」


見ているだけでは何が何だか分からなかった。

ただ、ユコルが腕を振るえばあたりの悪鬼どもはボロボロに消し飛んでいた。


「次元が違いすぎる。そういえば聞いたことがあるな……伝説のマイクロビキニアーマー冒険者。どんな魔物も歯牙にかけず、次々と倒し、放浪しているという……」


「それが彼、ユコル殿だと言うのですか!」


「そうとしたか考えられん。あのような装備を真面目に着る者が2人もいてたまるか」


そんな会話をしている間にも悪鬼はどんどん殺されていく。

その後、たった10分程で殆どの悪鬼を殲滅してしまった。


だが、ここで悪鬼の上位種族悪魔が悪鬼の大群の奥から出てきた。


恐らくこの集団のボスであろう。


何を考えたのか、悪魔は味方である筈の悪鬼を素手で殺し始めた。


「な、何をやっているんだアイツ!?」


「笑ってやがる……役に立たない味方な要らないということか」


部下を始末し尽くした。悪魔はユコルの元にゆっくりと歩み出す。


「成る程、貴様が親玉か」


「グギャア!!!!!」


悪魔は下卑た笑みを浮かべながら、ユコルに向かって口を多く開けた。

その瞬間、口元に強力なエネルギーが溜まり、エネルギー波を打ち出した。


「あ、危ない!」


ユコルは避ける事もせず、正面から受け止めた。


「ぐぬぬ、なかなか強力だ。しかし!我が鋼の肉体とこのビキニアーマーの前には如何なる攻撃も無力よ!」


ユコルは腹筋に力を入れる。


「フンッ!」


なんと、たったそれだけで強力なエネルギー波は跳ね返され、逆に悪魔の頭に直撃した。


自らのエネルギー波をまともに食らった悪魔は、頭が半壊しており死亡したのは明らかであった。


「な、なんて身体してやがる……」


「身体……?違うな。これは我がビキニアーマーの力よ。ビキニアーマーが無ければ我が鋼の肉体もただの肉の塊であるよ」


「嘘つけ!絶対今のビキニアーマー関係なかっただろ!?守ってたの局部と乳首だけじゃねえか!」


「おお、言い忘れておったな。実はこのビキニアーマーは特別性でな……。色々な効果が付与されておるのよ」


「まさか、マジックアイテムか?」


マジックアイテムとは、通常の武器や防具、アイテムとは異なり、何かしらの特殊な魔術効果が付与された物の事である。


マジックアイテムは、そもそも存在がレアだ。国中探しても3桁は無いであろう。

その分効果も絶大。性能としては最低でも通常の武具の倍は行く。


特殊効果はそのどれもが強力で、一つのアイテムに複数の特殊効果が付いていることもあるのだ。


下手をすればマジックアイテムだけで騎士団の部体を一つ丸ごと相手に出来てしまう。

その話を聞いた時は半信半疑であったが、今の無双っぷりを見れば事実であった事は間違いない。


「そうだ。このビキニアーマーには色々と便利な機能が付与されていてな」


「どんな効果なんだ?」


「たしか……攻撃力上昇、防御力上昇、回復力上昇、思考加速、エネルギー操作、体力上昇、五感強化、第六感、幸運値上昇、速度上昇、筋力上昇、身体能力上昇、老化防止、経験値増加……」


「ま、待って!待ってくれ!今何と言った?」


「……?攻撃力上昇、防御力上昇、回復……」


「おい待て!貴殿一体そのビキニアーマーに幾つの付与効果があるというのだ!」


「数えた事はないが……ざっと千は超えるな」


「せ、せんっ!?」


「そんなの……聞いた事ないですよ」


「であろうな。我がビキニアーマーは特別性だからな」


「しかし……普通マジックアイテムの付与効果は一つか二つ、最大でも五つだ」


「千なんて……聞いた事もないですよ」


「そのような事を言われても、実際に千あるのだから仕方あるまい?」


「そもそも、一体どのようにしてそんな装備を手に……」


「悪いが……それについては言えない」


「言えない……だと?何故だ」


「悪いが俺の気分の問題なのだ。すまんが詮索しないでくれ」


「ふざけるな。我々はそれを聞かなければいけないのだ!民の平和の為にな!貴様がその力を魔物以外に使わないと何故言い切れる?」


ここまで言われてはユコルも流石に眉を顰めた。


「あまりこのような事を言いたくは無いが、騎士団よ、私は助けたのだぞ。少しは恩義を感じても良いのでは無いかね?」


「それはっ……か、感謝する。だが、それとこれとは話が別だ!」


「隊長!やめましょうよ。こんなのただの個人情報を探ってるだけですよ!」


「新人、お前まで……」


「だってそうでしょ!こんなのまるで僕たちの力が及ばなかったのをユコル殿に当てつけてるみたいじゃ無いですか!そんな先輩見たくなかったですよ」


「……そう……だな。すまん」


「それに、ユコル殿は我々を助けてくれました。見ず知らずの我々を。そんな人がその力を悪戯に使ったりしませんよ」


「ああ……少し頭に血が昇っていた。ユコル殿、申し訳なかった」


深々と謝罪するゴートに、ユコルもそれ以上は何も言えなかった。


「分かった……。俺も言い過ぎた」




………………………………

………………

……




それから、増援が到着したのは20分後の事であった。

到着した増援部隊は数百はいた筈の悪鬼達が壊滅していたのだから。

その場にいたのは食い止めるのを任せた筈の隊長ゴートと、新人のロキの2人だけであった。

2人で倒したとはとても思えない。

しかし、話を聞いても2人はまるでその事について語らない。まるで口止めされているかのように……




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ビキニアーマーが強すぎる! @shimanekoshippo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ