僕は物語にはスケール感というものがあると考えます。
それはただ話を広げればいいという事ではありません。物語では語られない奥行き、それをどこまで伸ばせるのかが、素人と玄人を決定的に分かつポイントです。
誤解のない様に書きます。これは無駄に作り込んだ設定などの構造的の話ではなく、純粋な表現力の話なのです。
さて、この「【短編】ユーリアの復讐」ですが、僕としてはとても呆れる程、震えてしまう作品です。これは短編を軽々と越えています。本当ですよ。
この物語は美しく起承転結と流れ、基本に忠実に描かれております。ただし、そのスケール感は、僕の目を見張り、きっとあらゆる読者を引き込み、その奥行きと懐の広さには、これが短編であるという事実を必ず忘れさせてくれるでしょう。
僕は奥行きは表現力と書きました。それがどういう事かと言うと、単純に想像してみてください。素人が演技で「誰か助けて!」と叫ぶのと、アカデミー賞級の俳優が全技術を使い「誰か助けて!」と叫ぶのを。明らかにその表現力の差が想像できるでしよう?
つまり、この物語は同じ「言葉」を操っているはずなのに、その「言葉」の組み立て方が、明らかに他の表現者とは一線を画す仕上がりとなっております。
当然それは、しっかりとしたストーリーの上に存在する話です。
この僅かな長さの短編で、まるで十万字を越える傑作を読まされてしまったかの様な錯覚を僕に覚えさせてくれました。
でも、そんな僕の拙い言葉を読むより、この素晴らしい短編を読んで頂く方が、遥かに最善だと思います。
お薦めさせて頂きます。是非、この稀有な表現力のマジックと重厚な物語を味わって下さい。
宜しくお願い致します