筋肉 is パワー
御影イズミ
パワー is 筋肉
「さて、あとはこの資料を片付けて、と」
ガルムレイの観測者の塔にて、紙の資料を整え終わったフェルゼン・ガグ・ヴェレットが棚の戸に手をかける。
だが、開かない。引っ張れば開くはずの研究資料の戸棚が一切開かず、頑張れど頑張れどツルッと手が滑って開くことはない。
もしや建付けが悪くなってしまったのか? と少し戸を叩いてからもう一度開けようと試みても、開く様子はない。
「おん? どした、ガグ」
「ウル。……すまん、開けてくれんか」
戻ってきたベルトア・ウル・アビスリンクに戸棚を開けてもらおうとしたが、ちょっと待ってろ、とベルトアが声をかけると、何故か彼はダンベルを片手に持ってきていた。
「なんで??」
「いや、こう言うのって筋肉を呼び覚ましてからじゃないと」
「いや別に開けるだけだろ。筋肉呼ぶ必要ないだろ」
「何言ってるんだ! 急に力を加えたら筋肉がびっくりするかもしれないだろ!!」
「お前は何を言っているんだ??」
至極当然なツッコミがフェルゼンから飛び出るも、ベルトアはそれに気にすることはなく右手でダンベルを持って軽いトレーニングを数回行い、そっとダンベルを床に置いて戸棚に手をかける。
筋肉を呼び起こしたのが影響したのか、はたまたベルトアの力が強かったからなのか。フェルゼンでは開けられなかった戸棚はすんなりと開き、資料を受け入れる体制を整えた。
「ほらな?」
「……開けてくれたことには感謝するよ、ウル。だがいちいちトレーニングしてから開けんでも良い」
「ふっ、何を言っているんだガグ。こう言うのはな、細かいところから作られて行くんだぜ? ほら、お前も自分の筋肉に語りかけて資料を片付けるといい」
「お前のバカが伝染りそうだからやらん。ったく……」
資料を片付け、戸棚を締めるフェルゼン。
しかし片付け忘れた資料を見つけると、また戸棚を開かなくてはならず、同じ攻防を繰り返したのだった。
筋肉 is パワー 御影イズミ @mikageizumi
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