お肉料理をいただこう

七迦寧巴

第1話 お肉料理をいただこう

 疲れているときは、魚よりも肉の方が元気が出る。

 普段は焼魚や刺身を食べているが、何ヶ月かに一度はガッツリと肉が食べたくなる。

 手軽に食べられるのは焼肉。近所の焼き肉屋でハラミを食べると結構満足できる。


 でも焼肉よりも元気が出るのはステーキ。

 脂身の多い肉は胸焼けしてしまい得意ではない。したがって高級和牛よりも外国産のわりとリーズナブルな赤身肉を選ぶ。ロースよりもヒレ。


 ミディアムレアの肉を頬張る。噛むごとに旨味が出てきて弾力のあるその肉は、

「いま、まさに肉を食べてる!」と実感出来て至福の時。


 牛も良いけれど、もっと肉を感じるのは鹿肉かな。

 お気に入りのフランス料理屋では、よく蝦夷シカが入荷してくる。

 丁寧に解体処理をしているのだろう、臭みはまったくなく、肉の味が濃くて美味しい。


 なにより、山で暮らす草食動物特有の引き締まった筋肉を感じることが出来る。

 捕食動物から逃げるために鍛えられた足。モモの肉は脂身がなくさっぱりしている。


 今ではもう北海道に野生の狼はいないので、蝦夷シカは人間によって狩られる。一定数にしておかなければ山の木々は鹿によって食べられ、そこに暮らす小動物たちの生態系に影響が出てしまう。


 狩られてしまった蝦夷シカ。せめて美味しく命をいただくことにする。

 運動をまるでしない私の体に、筋肉もりもりの鹿肉が取り込まれていくのは、ちょっと申し訳ない気持ちになり、運動して筋肉を付けようと、そのときは思うけれど、思うだけ。

 ワインを飲んで良い気分になり、そう思ったことすら忘れてしまう。


 筋肉を感じる動物の肉。今まで食べたなかで一番はフランス産のウサギだ。

 クリーム煮込みで、長時間煮込まれているはずなのに、トロトロの肉になるどころか、これが筋肉だ! と堂々と主張していた。


 ピョンと跳ねて生きていたときの姿が浮かび、命をいただいたんだなと、しみじみ感じた料理だった。

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お肉料理をいただこう 七迦寧巴 @yasuha

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