筋肉大好き女子会
小石原淳
筋肉大好き女子会
よくよく考えてみれば、初期の段階で気付いていてもよかった。いや、気付くべきだったと後悔混じりに思う。
ネットでのやり取りで、私が大好きなプロレスラーにスーパースター・ビリーグラハムを挙げ、夢の対決としてトニー・アトラスvsトム・マギーを熱く語っても、全然響かなかったんだもの。
筋肉の各部署に関しても、反応が薄かった。それどころか笑いに変えていたくらいだった。「ヒラメ筋てどうしてヒラメって言うんだろうね? 形が似てるっていう理由なら、カレイ筋でもよくなくない?」とか。
そうそう、こんなこともあった。少し前に、小説投稿サイトのKでSNSを通じて大喜利をやっていて、いくつ目だったかは忘れたけれども、「『この本屋さん、絶対に経営者がマッチョだ』どうしてそう思った?」ていう風なお題だったから、私、わざわざKに登録して、文字通り嬉々として参加した。
“棚の上の段になるほど、重たい本を並べてある。お客さんから「取ってくれませんか?」と頼まれ待ち。”
“配達料金は重ければ重たいほど安い。”
“「特売セール! 本10キログラムで1000円!」”
“お客の体脂肪率が低ければ低いほど値引きしてくれる。”
“支払い方法の一つが、南洋の島で使われるような超巨大な石のお金OK。”
“漫画コーナーの大半を『キン肉マン』が占めている。”
“本が陽に灼けても気にしない。むしろ日焼けは見栄えがいい。”
こんな具合に、どんどん投稿した。
なのに、他のメンバーは誰もやらなかった。登録が面倒でも呟くだけ呟けばいいのにと思ったけど、違ったのね。
今日のオフ会だってそうだ。初めての記念すべきオフ会だというのに、食事のメニューはたいして相談することもなく、おでんに即決。一択って感じだった。
「おっ。来ましたよ、鍋」
「待ってました。ちゃんと特別注文のやつになってる?」
「――うん、なってるなってる」
「壮観だねえ」
みんな喜んで拍手までしている。が、私は内心、げんなりしていた。
そのおでん鍋の中身は、筋肉――すじ肉で埋め尽くされているのだから。
終
筋肉大好き女子会 小石原淳 @koIshiara-Jun
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