最近、筋肉流行りすぎじゃないですか?

スロ男(SSSS.SLOTMAN)

筋肉が全てを解決するなんて幻想だ! 俺はその幻想をぶっ壊す!

 L・ぺぺは近年の筋肉流行りをおおいに憂いていた。筋肉が全てを解決する。そんなことがあっていいはずがない。

 確かに鍛えることによって代謝があがれば健康にもなるし見目も美しくなる。自信も増し、そのことによって色々と物事がうまく回っていくことだってあるだろう。

 だが待ってほしい。筋肉と脂肪はトレードオフだ。筋肉をつけること、それは脂肪の喪失にほかならない。


 目の前の女性は待機時間を使って鏡の前でポージングをしている。全裸だ。まさか本気でボディビルダーの大会にでも出ようと考えているのではあるまいな?

 内線が鳴って数コール、面倒くさそうに受話器を取り一言二言やりとりをすると、彼女はベビードールを着始めた。そして部屋を出ていく。


 戻ってきたときにはスーツ姿の男に腕を絡ませ、先程とは打って変わっての笑顔で

「雨、大丈夫だった? 部屋、寒くない?」等といい、「飲み物はどうする?」と訊いた。


 最近の彼女の客は皆筋肉質な男ばかりだった。太客(体は細マッチョ)の紹介とかもあったのかもしれないが、プレイそっちのけで筋肉の話ばかりしている。

 そうしていざことに及ぶとなると、さながら何日本プロレスなんだという様相を帯びる。

 事後の会話も勿論、筋肉。

「あのプロテイン、味も悪くないし、よかったわ。さすが○○さん」

 少しはちん○のことでも褒めてやれ、と思うが客の方も満更でもなさそうで、これはこれでWIN-WINの関係なのかもしれない。


 ただブームというのはやがて廃れるからブームというのであって、今やゴールドジム風呂屋支店といった現状がいつまで続くのかはわからない。

 それよりも、おっぱい、おっぱいだろう。巨乳は一過性のブームからいまや主流となりつつある。君はどうして、あのふくよかな乳房を捨ててまで筋肉へと走ってしまったんだ!


 L・ぺぺは嘆く。

 元はそのふくよかさを活かしてマットの新星とまで謳われた彼女の先行きと、すっかり使用量が減り、なかなかスリムにならない我が身の行く末を案じて。


(了)



あとがき。ローションってRじゃなくてLなんですね、今回初めて知りました。

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