筋肉道

夕日ゆうや

今日もみんなで、マッスル! マッスル!

「はい。筋肉が喜んでいるよ!」

「「「マッスル、マッスル!」」」

 ここは筋肉道。

 筋肉による道場である。

 筋肉が全てを解決する。

 筋肉あるものが悟りを開き、この世界のことわりを理解する。

 上腕二頭筋。腹筋。背筋。

 様々ある筋肉をどのように鍛えるかは自由だが、育てた分だけ、喜びが生まれる。

「筋肉をつけたら彼女ができました!」「宝くじで1000万円当たりました!」「子だからに恵まれました!」

 なんて言うのは日常茶飯事。

「はいはい」

「ワンツーワンツー」

 今日ももやしっ子を鍛えている。

「プロテインは飲んでいるかい? 食事はタンパク質だ」

 食事の指南も行っている。

 そのほとんどが脂質であったが、今では大豆製品やチキンなどのタンパク源をもとに切り替えている。もちろん糖質は抑える。

 これだけで筋肉は育つ。

 よぼよぼな九十才の年寄りも三ヶ月もすれば、そこらの若者には負けぬ力を手に入れる。

 もやしっ子もムキムキになれる。

 すべてはこの筋肉道に入ってから得られるもの。

 そして筋肉は日常生活には欠かせない。

 重い荷物を持ったり、背筋を正したり。

 そんなときに筋肉が鍛えてあれば、問題なく行えるのだ。

 筋肉、やはり筋肉が全てを解決する。

 筋肉を鍛える俺のあだ名はマスター筋肉。

 そんじょそこらの筋肉人とは違う。

 すでに国の免許も頂いているほどだ。

 この筋肉は災害時、ボランティアとしても活躍している。

 重い水、食糧配布。

 様々なところで筋肉は活躍するのだ――。

 

 だが、今の子どもたちはうちの中でゲームをしたり、スマホをいじったりで筋肉に目を向けてはくれない。

 だから俺はある計画を遂行する。

 その名も人類筋肉化計画。

 地上にいる人間を一人残らずマッチョにするのだ。

 そしてそれはもうじき政府から発表される。

 テレビの前で待機していると速報が流れてくる。

『国会では人類筋肉化計画というふざけた提案をしたようです』


 世論の反発は大きかった。

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筋肉道 夕日ゆうや @PT03wing

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