深夜の散歩で再会した初恋相手は金目当てで彼氏持ち〜投資家の俺の勝ちってことでいいですか?〜

Ab

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 深夜の散歩で起きた印象的な出来事といえば、やはり私は旧友との再会をあげる。

 高校を卒業して上京していた彼女はたまたま地元である群馬県に帰ってきていたらしく、それはまさに運命的な再会だったと言っていいだろう。


 高校卒業から早十年。

 お互い色々変わっていた。


 俺は彼女のことが好きだった。当時は長かった黒髪も今は彼氏の趣味だと言って金色に染まって切り揃えられていたけれど、整った顔立ちとマッチしていることには変わりない。


「本当久しぶりだよね。でもまさか彼氏できてるとは思わなかった」


「いやー、これでも結構モテるんだよ? 高校の頃も何人から告白されたか分からないし」


「でも誰とも付き合ってなかったじゃん?」


「まあね。でも大人になっちゃったからなー、お金の大切さに気づいたってわけですよ」


「つまり彼氏はお金持ち?」


「そう」


 へぇー。なんか色々とツッコミどころのありそうな関係性というわけか。

 俺の行きつけの居酒屋で彼女と駄弁り、お互い酒が進んでいく。思ったより強いな。できればホテルまで行きたかったが、まあ、彼氏がいると聞いてからは逆に安心している自分もいる。


「君は仕事なんだっけ?」


「俺は仕事っていうか、投資家てきな」


「え、すご! もしかして大金が入る予定とかあるの?」


「まあ、それなりには」


「ちなみにどのくらい?」


「億くらいは」


「億!?」


 サイバー系のベンチャー企業が俺の主な投資先であり、一度大当たりしてからはずっとこの道に浸かっている。このネット社会においてサイバー会社はどんどん成長していく有力な企業であり、非常に注目される投資先である。


 しかし、億でそんなに驚かなくても。

 彼女ほどの美貌があれば億稼ぐ男なんていくらでも釣れるだろうに。医者とか。

 俺が医者だったら喜んで釣られるけどね!


「彼氏も億くらい稼いでるんじゃないの?」


「私の彼氏は医者だから、まあいずれはね。でも医者って結局給料だからさ、そんな一度に大金を稼いだりはしないんだよ。少なくとも私の彼氏はね」


 医者も思ったより大変な仕事なんだな。

 それよりも、すみません。お金の話しだしてから距離が近くて色々当たってるんですけど。


「ち、ちかい」


「近づいてるからね」


「堂々と浮気しようとしないでください」


「えー、いいじゃん」


 マジかよこの女。いやしかし、いい匂いがする。

 いいのかな?

 高校からの初恋、実らせちゃっていいのかな?


 そう思ったところで、天井近くに設置されたテレビが定時のニュースに切り替わった。

 特集が目に入る。




『他者のプログラミングを丸パクリか』


『サイバー系ベンチャー企業の社長が逮捕』

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