マリとマリン 2in1 朧
@tumarun
第1話 ねこざ
サービスエリアの屋外テラスに茉琳と一緒に座っている。もうすぐ日付も変わろうかという深夜だったりする。翔が個人の趣味で都市圏のイベントに行こうとしたところ、茉琳も駄々を捏ねて同行した。往復夜行バスになると説得した。痴漢が出るとか、シートで寝るんだぞとか、バスのトイレは男女共用なんだぞとか、もちろん途中下車はできないとも。茉琳は目を強く瞑り、唇を噛み締めて、
「行くもん」
と一言。
「俺は中野に行くけど、お前はどこ行くんだ?」
「同じだよ。向こうで別れたら、絶対迷子だね」
(男の趣味で行くんだが。いいのかなぁ)
「ブロードウェイだっけ、アクセとか面白いモノあるかなあ」
結局、茉琳は男がほとんどのイベントでトークと歌と振付を楽しんでいたようだった。翔も望みの戦利品をゲットしたようでホクホクしていた。
しかし帰りに乗ったバスが故障した。途中の休憩のため、サービスエリアに入ったところでエンジントラブル。現在、代わりのバスを待っている。回りは宵闇。2人は西館にあるコンビニで淹れたてのコーヒーとホットミルクを買って、時間潰しの散歩がてら外のテラスに行った。
「照明が明るいから、お星も見えずらいね」
建屋の向こうから大型トラックの動力の音も微に聞こえてくる。
「あった、カシオペア座。ということはこっちは獅子座かな」
茉琳はテラス席に座らないで空を指差しくるくると回っている。
「三角も見えた」
翔は茉琳の楽しそうな声を聞いて
(茉莉のやつも星座を見るの好きだったなあ)
先月、亡くなった同級生を思い出していた。
「ねえ、翔。猫座ってどこにあるか知ってる?」
「猫座はないよ」
「えー、嘘だしー」
「なんかプライベートすぎたエピソードなんで認められなかったって」
翔は同級生から蘊蓄を思い出しながら茉琳に話す。
「おのれ!、12支に飽き足らず星座まで猫がいないとは!」
翔は茉琳を見る。同級生も同じことを言っていたのだ。
「翔、私が世界に認めてもらえるエピソードを配信して猫座をつくるよ」
茉琳が拳を握って力説した時、
「あっ流れ星」
「どこ?どこぉ?」
茉琳が背にしている山の稜線の上に銀色の一筆書き。
「もう、消えたよ」
「えー、びどいしー。神様おねがい」
山方向へ向いて手を合わせて茉琳は拝んだ。
静寂が周りを支配する。茉琳の嘆息。
「あぁーあ……あ」
真っ黒な夜のキャンバスに銀色の筆の一挿し。
「おっしゃあ! 神様ありがとう」
茉琳は拳を突き上げている。翔はあんぐりと口を開けてその光景を見ている。
深夜の流れ星は2人の共通の出来事として思い出になった。
「なあ、茉琳。神様もラジオ深夜配達を聞くのかな?」
「知らなーい。高層気流の方がすきやしー。おやすみなさい」
マリとマリン 2in1 朧 @tumarun
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