蒸しパン食べたい

まめでんきゅう–ねこ

蒸しパンが食べたい!ただそれだけ

深夜の散歩のついでに、私は何故か無性に食べたくなる蒸しパンを探していた。


蒸しパン。それはたまに無性に食べたくなる神の食べ物………。


あのフワッフワの食感と、パサパサする後味が、無意識に求めている。


しかし今は深夜。パン屋がやっているとは思えない。


諦めようとしたその時!遠くからアナウンスが聞こえた。


「モンスターのパン屋が作った美味しいパン、いかがですか〜!ピザ、カレーパン、焼きそばパン、食パンなどの惣菜パンが勢揃い!期間限定で蒸しパンもやってるよ〜!」


モンスター?モンスターって、あのモンスター?え、モンスター??????


わけがわからない。けど、蒸しパンと聞いて、聞き流すわけにはいかない!


よくわからないけど、行くしかない!


そのアナウンスは公園の方から聞こえた。


私は走る!最近運動不足だけど、そんなの、どうでもいい!

蒸しパンが食べれるのなら、私は全てを寛容かんようする!



ダッシュダッシュダッシュダッシュダッシュ



あ、財布忘れた!ああもう!早く帰って、早く行こう!おそらく屋台だと思うので、すぐに行かないと、どっかへ行ってしまう!











3分後………………。


ハァハァハァハァハァハァハァ



あとは公園まで行って、買うだけ!深夜だから、売り切れは多分無いと思うけど、早くしないと!



走れ〜走れ〜、俺〜た〜ち!



脳内でこの曲が再生される。


こっちの路地裏が近道だ!


狭くても、行くしかない。蒸しパンのためなら!



ハァハァハァ



なんとか公園に着いた。屋台が見えたので、近づいたが、衝撃的な状況だった。







その屋台の近くには、ベンチがあったのだが、そこに二足歩行の茶色い牛が座っていたのだ。

しかも蒸しパンを食べている!


そして、屋台の店長は、一つ目の緑色のスライムのようなものだった。


「…うーん、もっと甘くて良い。買う価値ねぇなこりゃ。食べログに☆つけるほどの価値ねぇ」


「これ誰が作ったと思ってるんだ?あんた。結構有名なパン職人が作っているんだぞ。批判する勇気あんのか?」


「誰がどれだけ苦労して作ろうが、客はそんな苦労知らない。私情しじょう市場しじょうに持ち込んではいけない」


「ま、俺はそのパン職人のパンを転売して、異世界で売っているだけだし、関係ねぇがな。だが、金は払ってもらうぞ」


「払うほどの価値ねぇが、しゃあねぇな。今借金が5兆円あるんだがなぁ」


私は目の前で行われている状況に、全く理解できない。


牛はスライムにお金を払うと、地面に現れたオレンジ色の穴に落ちていった。


「毎度あり。……お、この世界の客は初めてだな。あんた、パン買いに来たんだろ?何が良い」


スライムは私の存在に気づいた。私はまだまだ驚きを隠せない。


「……まぁ、いきなり得体の知れないものが現れて、パン買うか聞いてきたら、そりゃ驚くよな。俺はモンスターという、こことは別の世界から来たんだ、転売しにね」


「え、あ、はい」


「怖がらないでほしい。商売に影響するから。大丈夫、攻撃する気は一切ないし、むしろウェルカムだよwww」


スライムはウィンク?した。一つ目なので、よくわからないが。


まぁ、顔も笑顔だし、敵意はないのだろう。


「じゃあ、蒸しパン1つください」

「あざす。何個?」

「1個で」


スライムは蒸しパンを袋に詰めた。


「100円です」

「あの、お金は……」

「え?ああ、この世界の通貨で大丈夫。あとで変換するからさ。……はい、どうも。これからもよろしくね」


私はベンチに座ると、蒸しパンを頬張ほおばった。





ん⁉︎美味しい…!これがモン星の蒸しパン…。


地球では絶対食べれないような味……。独特の甘さ。


しかも、ほんの少し苦味がある。甘すぎず、苦すぎず、バランスの良い味だ。


しかも食感が素晴らしい。フワッフワで、餅と勘違いしてしまうほどのモチモチ感。


これは、買う価値がある!






お腹いっぱいで、帰ろうとしたその時、屋台の上の空間に穴のようなものが空いた。


「ディメンション・パトロールだ!」


スライムがそう叫んだ。

直後、穴から一つ目の球体とタイヤがついた靴のようなモンスターが次々と出てきた。


「転売目的で異世界へ行くことは法律上、禁止されている。ちょっと話を聞かせてもらおう」


「待って!俺は異世界の人々にもこの味を味わってもらいたくて、こんなことをしたんだ!」

「ダメだ。転売なのには変わらない」


スライムはディメンション・パトロール?に連れていかれた。

穴は閉じ、いつもの風景へ戻った。



なんだったんだ。今のは………………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蒸しパン食べたい まめでんきゅう–ねこ @mamedenkyu-neko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ