恋~Amore
「ボレロ」
その恋はピアニッシモで始まったまるでラヴェルのボレロのように
五首連作「コンビニ」
コンビニに行けばそこには人がいて僕に気づいてくれる、はずだ
日曜の夜を一人で過ごすのがやりきれなくてコンビニに行く
指の冷え缶コーヒーで温めて君が来るのを待ったコンビニ
日曜の夜の孤独を持て余しいつもは行かないコンビニに行く
いつになく一人でいるのが切なくて真夜中だけどコンビニに行く
「玉の緒の」
玉の緒の絶えて空しき恋なれど和歌詠むときのなけなしの糧
「学生時代」
君一人残りてギター弾く姿目に捉えつつ教室を出ず
木漏れ日のベンチで二人弾いた曲アルハンブラは遠い想い出
初めての夏合宿の最後の夜ギターデュオせり君はあいつと
「公園」
あなたと最後に会った公園のベンチは なぜ青だったのだろう
公園の雑木林の木漏れ日を歩いただけでそれでいいよね
「卒業」
学校の裏門近くに一本の桜ありしを君は語りぬ
「追憶」
鴨川に映る街の灯連なるを肩寄せ眺めし岸に一人おり
「ロボット」
恐怖症隠して乗った観覧車 動きも言葉も終始ロボット
「千本桜」
散る花を払いつ君は走り来ぬ千本桜土手の坂道
「花冷え」
別れ際触れた指先花の冷え降りくる雨の更な冷たさ
「狂う蝶」
ガラス張りビルの壁這う春の蝶映る己に恋て狂うや
「忍ぶ恋」
年下のピアノ講師の細い指 窓無き部屋に仄か春の香
誰もいない部屋のピアノの蓋を開け触れし鍵盤の角の滑らか
年若き講師に抱く我が想い叶わぬものと知りつつもなお
サークルの講師に抱く心根は疑似恋愛と思い定めよ
「職場の恋」
定例の形ばかりの会なれど待ち焦がれしは君に会うため
武蔵野の研究庁舎のロビーにて君は云うなり恋に無縁と
オフィスのエントランスの植栽に春を見つけたとうれしげに君
それぞれのデスクに「ありがとうのきもち」煎餅配りて君は去りぬ
「遥けき恋」
若き日の恋は遥けきセピア色ジャズ口ずさむ君の横顔
風やらむふとした弾みに聞こゆるは少しかすれし君が歌声
「独り寝」
遠ざかる車の尾灯見送りて我は帰りぬ独り寝の部屋
君去りて足取り重く入る部屋は共寝の温もり冷めて久しき
「遠距離の恋」
赴任地の夜空に懸かるオリオン座君も何処ぞ眺め遣るらむ
遠ざかる車の尾灯闇に消ゆ五回点滅願い空しく
「通行止め」
行く道を阻む通行止めの看板は 越えれば破滅と告げる赤色
「白檀」
「野に遊ぶ」
「恋歌」
桜見上げ
「ありがとう」
「ありがとう」は恋愛において
「さよなら」と同義語だよね
「どうもありがとう」
「傘」
日傘差し貴夫人のごと歩みたり避暑地ホテルを出でて数分
いたたまれず雨模様なれど旅館出る番傘と君への想い抱いて
「ミツバチのダンス」
蜜蜂のダンス日和ねと君は言いお尻ふりふり見せてくれたね
「吐息」
降りしきる雪を見上げて吐息付き貴女はようやく口を開きぬ
降る雪を向き合い黙って眺めていた別れ話のカフェの窓際
「悔い」
恨み言決して口にしない
「黄砂降る日」
自動車が近づく度に本閉じて耳澄ましていた黄砂降りし日
「爪切り」
足の爪切るその仕草可愛いと思ったことが確かにあった
「痒い」
背が痒い
あなたは優しくポリポリと搔いてくれたね
あぁ背が痒い
五首連作「春の雨」
春時雨傘も差さずに来る人を 私は傘を差して待ちおり
雨止みて夏蜜柑の花匂い来る裏門脇に君来るを待つ
春驟雨駆け込む軒先幅狭し爪先立って身を寄せ合いぬ
雨の中傘も差さずに走り来て貴女は我の不実をなじりぬ
貴女を見失いし春の雨の夜 ネオンの街を濡れて歩きぬ
三首連作「五月の薔薇」
日傘さし君は深紅の薔薇が咲く白い階段のぼり来たり
噴水の飛沫煌めく薔薇園に君はモデルのポーズで写れり
先を行く君は突然立ち止まり吾を睨んだ五月のバラ園
「オープンカフェ」
様々な人行き交うを眺めつつ待つも楽しきオープンカフェ
三首連作「不敵な彼女」
意表突く君の大きなサングラス何やら不穏なシチュエーション
沈黙が何より怖い君の場合ぎくしゃく言葉を探し繕う
嫣然というより不敵が相応しい君の笑顔が空恐ろしい
第一歌集「遠吠え」Twitter投稿短歌 虹岡思惟造(にじおか しいぞう) @nijioka
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