第2話

 あなたのことが好きだと気づいたのは、出会って何年も経ってからだった。


 ここは、2022年の日本。都会でもなく田舎でもない街に、私は住んでいた。なんとなく生きてきた35年間だった。その街で生まれ、その街で育った。

そして、今もまだその街にいる。 


 退屈だった。


 なんで生きてるかなんて考えたこともなかった。そういうもん。命が尽きるまで。そういうもん。


 命なんていつ尽きたって構わなかった。


 地球の歯車は止むことなく、都会の歯車もやむことがない。この世界で止まっているのは、私だけだ。 


 

  

 そんなとき、彼と出会った。彼は、職場で仲良くなったアンリのパートナーだった。

 

 「眩しい人」 


第一印象はそれだった。

明るくて陽気。よくしゃべる。馴れ馴れしい。


・・・苦手なタイプ


そう思った。


できるだけ関わらないよう、距離を置いた。


まっすぐなその目は、私を刺すような光に思えたのだ。


「暴かれる!」


その光は私を照らし全てを明るみに出してしまうような恐怖すら感じた。裸にされるような。


闇の中で取り繕って生きてきた私には、一番嫌な光だった。


それが、初めて会った時の印象だった。


私は、闇だった。暗い暗い闇。光とは無縁の世界。






だけど、あなたはこんな私にも光を当ててくれた。


何度かグループで会うようになり、知らず知らずのうちにその引力に惹かれていたのだ。


矛盾するようだが、あなたの光は怖い反面、魅力的にも思えていたのだ。


あなたは、私にもみんなと同じように話しかけてくれた。笑いかけてくれた。

楽しませてくれた。


笑った顔がとても眩しくて、虜になった。


笑った顔をずっと見たい。そんなふうにも思った。




だけど、あなたにはパートナーがいた。

美人で色白で、ほっそりしていて、みんなから好かれる。

あなたに守られている彼女が、羨ましくて仕方がなかった。

私には全部がそう思えた。


容姿も発する言葉も、ライフスタイルやファッションも、すべてが彼を魅了するのだろうと思うと悔しかった。


あんなにかっこいい人とパートナーになれる人はいいな。


私には関係のないことだった。





そう思って、「あの人が好き」という感情に到達する前に、そっと閉じたのだ。




私はアンリを応援した。


彼と上手くいくように、心から願った。

それが彼の幸せであるのだろうと思ったから。





 

 


 

 

 

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ちいさくておおきな恋物語 @Nand

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