第4話 虚(うつろ)
座り込んでいる女性。それはまるでこの世のものではないような不思議なものを感じていた。しかし、その女性は糸の切れた人形のように倒れこむ。仁は背後の闇に危険なものを感じていた。
「こんなところにいやがったのか
唯人の体を一時的に借りた仁はその闇の中に見知ったモノの気を感じていた。
「お前は仁か。やけに弱くなったではないか。最強の次元祓魔師の名が泣くぞ。」
仁は闇の中から出てきた見た目も力も人間にしか見えないモノに言われる。
「そうだな。俺の得意技の時空境界の中和と空間把握といったところだ。その能力が元の何割かも考えたくないがな。」
「しかしいい器ではないか。一目見ただけでも不自然なほど術師への才能があるな。あちら側の穢れにも相当な耐性がある。」
「そうだな。俺が余裕で入り込めるほどの能力のメモリーがあった。」
「私はお前を如何こうするつもりはない。ここら辺はやけに勘の鋭い術師がのでね。」
「そうか。最後にお前に聞きたいことがある。」
仁は闇に消えてゆく虚に向けて言った。
「なぜおまえは俺たちを裏切ったんだ。」
その質問には答えずに虚は闇に溶けた。
残ったのは身元不明の女性と怒りなどの感情が混ざった仁の舌打ちだった。
唯人が目を覚ますとそこは隣駅の付近であった。
近くにはさっきの女性が横たわっていた。
「だっ大丈夫ですか!?とりあえず救急車を…」
「大丈夫だ。処置は済ませてある。時期目が覚めるだろう。」
仁は言った。
「仁!?助けてくれてありがとう。何があったの?」
「あぁお前が良くない気に触れてしまって少しおかしくなったから無理やり道を作って帰ってきたんだ。」
そういうと仁は行く場所があるんだろう早くいくぞと言うと黙ってしまった。
「んっ…ここは?…」
女性は意識を取り戻し声を出した。
「大丈夫ですか?」
唯人は声をかけると、女性は唯人の顔を見るとハッとするとお礼を述べた。どうやら途切れかけの意識の中唯人の顔を覚えていたようだ。
「ありがとうございます。助かりました。」
「無事なようでよかったです。ここはM駅ですが帰れますか?」
唯人は駅を指しながら言った。
「大丈夫です。ここに職場があるので。というかあなたあっちにいた時と雰囲気が違いますね。なにか柔らかいように感じます。」
その女性は勘が鋭いのか仁の時との差を指摘した。
「彼方が不思議な場所だったので警戒していたのかもしれないですね。怖い印象を与えていたらすみません。」
唯人がそういうと女性は大丈夫ですよと返し、立ち上がった。
「では失礼します。職場に報告しないと。」
そういうと去っていった。
「すごいな。まるで慣れているみたいだ。」
そんなことを考えながら唯人は祖母の暮らす家へと向かった。
「そういえばバッグにあの仮面入れてたよな…割れてたりとかしてないかな…」
途中仮面のことを思い出して確認をすると、仮面は跡形もなくなくなっていた。
「っ!仁あの仮面がない!あっちに落としたのかも」
仁に言ったが、仁は冷静にいった。
「彼方には落ちていなかった。もしかすると持ち主が取り戻したのかもな。もう持ち主から狙われねえぞ」
それはそれで問題な気もするが、正直あの持ち主がどんな者かも知らないので何もできないのであった。
その祓魔師は彼岸を迎える。 柚野朱莉 @citron24
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