第3話 駅
唯人は今駅で電車を待っていた。
「おいおいこれで何分経ったんだ。電車ってのはこんなに来ないもんなのか?」
「ん~ここは結構田舎だからなぁ。でももうすぐ来るよ…」
徐々に電車の走る音が近づいてくる。
「ハズレじゃないか。」
目の前に止まった車両の窓からは何人かの人影が見えていた。
「え?何を言ってるの?。」
「乗ってみるといい。」
仁は邪悪な笑みを浮かべるように言った。
「何それ…」
唯人は電車に一足踏み入れる。その瞬間気が付いた。
「あれっ…足がない…?」
つり革につかまる人達には足はなくまるでつり革にぶらさがっているようだった。
「そうだ。あいつらは幽霊だ。おそらくこの電車は死者の乗る電車だろうな。」
「えっ?それ降りたほうがよくない?」
唯人は降りようと振り向くとドアはすでに閉じてしまっていた。
「あっ…終わった。」
「なんとかなるだろうな。」
そういいながらも唯人は不安なまま電車に揺られていた。徐々に景色が非現実的で不気味なものへと変わっていく。空は紫かかって木は見たこともないような形になっていた。むしろ見慣れた電車が浮いて見えた。
何十分経ったのだろうか電車は駅に止まった。
「降りるぞ。」
仁は唯人に言う。
唯人は頷き電車を降りる。降りてすぐに駅の名前の書かれた看板を見た。
「きさらぎ駅?」
その看板には見たことの無い文字で書かれていたが、何故だかそう書いてあると認識した。
「きさらぎ駅。有名な都市伝説だったか…」
きさらぎ駅。それは有名な都市伝説の一つ。
「なんか聞いたことあるかも。でも都市伝説って基本嘘なんじゃないの?」
「まったく夢がないな。今どきの若者といったところか。簡単に言えばこの話が伝わりイメージが固まった結果概念が形成されたといった感じだ。」
簡単には言えてはないような気がする。
「まぁこの空間も無限には広がってない。どこかから出れるだろうな。」
仁はそれだけ言った。
「えぇ…それこの不気味なところを歩き回れってことなの…」
駅を出て周囲を見渡すと田園が広がっていたが、遠くにある鳥居が目に付いた。
「あれ出口かな?」
「多分な。」
唯人はその鳥居に向かった。
「タス…ケテ…」
助けを求めるような声が聞こえるような気がした。
「今のは!!?」
唯人は声の聞こえた方向を向こうとすると身体が固まったかのように動きが止まる。
「待て。こんなところにいるやつはろくな奴らじゃあない。帰れなくなるぞ。」
「でも……心配だ!!」
必死に後ろを向こうとする唯人に仁は折れた。
「ハァー…好きにしろ。」
身体の動きが自由になり、勢いよく振り向くとそこには女性が座っていた。
「やばい!身体貸せ!」
唯人の意識は途切れた。
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