恋をした
「ああ、ほら! 何だったら、推しになってやるぜ? あのテニス漫画の
「……マイナーですいませんね」
「いいんじゃね? 俺もあいつ好きだし。何気に幼馴染み思いのいい奴だと思うぜ?」
「そうですよ、いい人なんですよ。でも、推しにならなくていいです」
「なして?」
「……私はあなたとデートしてみたいです。あなたも……、タイプなので」
私が恥ずかしくなりながら言うと。
「あんらー、それはそれで嬉しいが、照れるな」
死神さんも気恥ずかしそうに頬を掻いた。
「んじゃま、行きますか。最初で最後のヲタデート。腕組む? 手ぇ繋ぐ?」
「……手がいいです」
「オッケー」
死神さんは私の左手にがっちり指を組み合わせるよう絡めた。
「最初は何する?」
そして、そのままリードするように歩き出す。
「……テニス、教えてほしいです。……あのジャージを着て」
「いいねいいねー、最初からぶち込んできたねー」
「そして、推しの好きなもの巡りしたいです」
「強面ー、ツンデレー、ファイヤーか。スイーツ、サンドイッチ、焼肉かー。いいじゃんいいじゃーんっ」
「キャラソンを歌って」
「美声を聴かせてやるよー」
「イベのDVD鑑賞会したいです。一緒に楽しみたいです」
「ペンライトでも何でも用意してやるよー」
「そして、最後は。死神さんの好きな所に行きたいです」
「…………」
死神さんは立ち止まり、私を見た。
この時、私はどんな顔をしていたんだろうか。
死神さんは愛おしそうに私を見つめた。
「……うん、だから、そういうとこよ。お前は天寿を全うすべき奴なんだ。「私なんか」と、自分を
美味しい魂を食べたいからではない、同情でもない。死神さんの本心だと思った。
「……ありがとうございます」
「おうよ」
私たちはこの後、ヲタデートを楽しんだ。
そして、私は、天寿を全うし、死神さんに魂をあげることができた。
私の恋人さん 冥沈導 @michishirube
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