夢の欠片
五木史人
2月29日生まれの閏くんじゃん
やはりフロント前には先生が見張りについていた。
そんな事もあろうかと、従業員用の出入り口は調査済みだ。
修学旅行の夜、詩織はどーしても、スナック菓子が食べたくなって、ホテルを抜け出そうとしていた。旅館の売店にはなかった為だ。
詩織は関係者以外立ち入り禁止地区を走り抜けた。
詩織の高校は代々、修学旅行時に問題を起こす高校ナンバー1の座を維持していた。
なので、ちょっと位なら、問題ないのだ。
従業員出口を走り抜けた。
さすがにここには見張りは居なかった。
脱出成功だ!
コンビニぐらいどこにでもあるだろう。
それは都会の人間の甘い見積もりに過ぎなかった。
地図には合ったのだが、コンビニではない物に変貌していた。
諦めるか。
と街路樹を歩いていると、前に学校のジャージを着た少年がうろうろしていた。
同じルートで脱出した同士がいた?
「2月29日生まれの
まだ中学生みたいな
「生年月日は余計」
「そうね、まあ二つ名みたいなもんだからね。で、何してるの?」
「散歩」
「真夜中に?って言うか、そのお菓子どこで買ったの?」
「ずっと向こうにあるお店。もう閉まってるけど」
「ちょっと欲しい」
「
と
「美味ちぃ」
と唸る詩織を横に、
「何か拾った?」
拾った何かが見えなかったのだ。
「夢の欠片」
手の平の上には何もないのだが。
「ん?」
「いい?」
何がいいのか解らなかったが、詩織は、
「いいよ」
と答えた。
「これが夢の欠片?」
「そう、正確には破れた夢の欠片。冬が近づくと、時々落ちてるんだ」
「それをどうするの?」
「花火の火薬に混ぜて、夏に打ち上げるんだ。これがあるとないではキラキラ感が全く違うんだ」
「父が言うには、それは夢を追いかけていたキラキラしていた時の輝きらしいんだ。
観客はそんな花火を見ると、無意識に懐かしさがこみあげて来るらしい」
詩織は
夢を追いかけていたキラキラしていた時の輝き。
「綺麗な話だね」
と詩織は言ったのだが、
「なんで?」
「お菓子、ちょっとだけって言ったのに」
「ごめん」
と詩織は
完
夢の欠片 五木史人 @ituki-siso
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