不思議な夜に彷徨って
にゃべ♪
転がる夜
僕は真夜中に散歩をしている。見慣れた街の景色がまるで別の世界のようだ。田舎の夜はとても静かで、みんな寝静まっていて。
それでいて少し肌寒い風が吹くので、ふと空を見上げてしまう。
「月が笑っている」
視線を戻すと、斜めに伸びる塔。知らない景色だ。興味を抱いた影が先走った。見失わないにようにと後を追う。重さのない影は早く、すぐに夜の闇に紛れてしまった。僕は近くの公園で一休み。
噴水が止まっている。覗くと干からびたナメクジ。時間が止まっていた。その時、空から言葉の結晶が降ってくる。手のひらに乗せると踊って逃げていく。
視線を感じて振り返ると、闇の中に金色の瞳が浮かんでいた。
そこで僕は星が消えていた事に気付く。一体僕はいつの間に闇に食べられたのだろう。何も見えない中で時計の音だけを頼りに歩く。途中で波の音が聞こえてきて分からなくなる。頭の中からガラクタがこぼれていく。
影をなくした僕は、すっかり方向音痴になっていた。
闇の中で途方に暮れていたら、淋しい風が手を引いてくれる。導かれた先は塔の上。暗闇の中では何も分からない。風はどこにも吹いていない。ここに影はいない。
戻ろうとした途端に塔は崩れ、僕は落下しながら鳳凰が東に向かって飛んでいくのを見た。
瓦礫の下で何も出来ずに歴史に埋もれていると、読者が次のページをめくる。気が付くと僕は静かな静かな池のほとりにいて、何もせずにただ夜空を見上げていた。
闇に潜む瞳が魔導書の一節をそらんじる。それで僕は呆気なく崩壊した。
時が過ぎ、僕は不完全に復元される。未完成な僕は僕は闇夜に踊る。月は一体どこに行ってしまったのだろう。まだここは闇の中なのだろうか。
まだ影は見つからない。好き勝手に遊んでいるのか、帰り道に迷って泣いているのか。観客のいない舞台の上で僕は踊り続ける。
夜は今日も転がっている。まだここから抜け出せないでいる。
不思議な夜に彷徨って にゃべ♪ @nyabech2016
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