『ジャングルジムと「にじ」』/#超短編小説/#500文字小説

想田翠/140字小説・短編小説

第1話 『ジャングルジムと「にじ」』

「登ろうぜー」

 泣き喚く子が続出した入園式とは打って変わって、背中をしゃんと伸ばして園長先生のお話も静かに聞いていた……のはわずか30分前。

成長を感じて関心していたのに、園庭に出た途端パワー全開な息子達。


「一緒にお写真撮ろう!」

 母親達の声は届かない。

咲き誇る桜に見向きもしないで、最後の園服が汚れるのも気にせずに遊具に向かった。


「俺の陣地っ!」

 まるでこの世界を支配するライオンの王のようにジャングルジムの頂上に君臨している。

年少の頃は2段目に足をかけるのさえおっかなびっくりだったのに……。


 幼稚園と地続きの敷地内にある公立小学校に通う息子は、きっと入学式まで……

いや、そこからの日々も地続きに感じているのだろう。

小学生になっても代り映えしない通学路だろうけど、手をつないで一緒に通った道を1人で重いランドセルを背負って歩いていく姿を見送る母の心境は大分違う。


「一区切りついたね」

 怒涛の園生活を一緒に乗り越えたママ友がつぶやく。

卒園式での『にじ』合唱に私と同じように号泣したとわかる潤んだ瞳をしていた。


「これからも雨上がりには虹が見られるといいね」

 終わりのない子育ての健闘を祈り合った。

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