デート
伽藍青花
第1話 デート
私は、眠れない時――単純に昼寝しすぎた時だとか、漠然とした不安がある時だとか――があると、深夜に散歩に出かける。
散歩、と言ってもバイクに乗るのだが。
その日は、家から20分くらいの山の休憩所に行くことにした。
夕方、彼氏と花火をしたせいで、興奮して寝れなかったからだ。
休憩所に着いてトイレを終え、間違って買ってしまった缶コーヒーを飲みながら休憩していると、緑の車が入ってきた。
助手席から、お婆さんが出てくる。
「こんな時間に、お出かけですか?」
つい話しかけてしまった。
「ええ、主人が車でお出かけをしよう、って言ってくれて。あの人から逢引に誘ってくれるなんて滅多になかったから。ああ、若い人の言葉で言うと、……でえと、って言うのかしら。だから、とっても嬉しくなって。しかも、いつも無愛想な顔なのに、とっても赤くなってて。結婚したてのあの頃を思い出して、つい張り切っておしゃれをしてしまったわ~。……あら、ごめんなさい。つい惚気ちゃったわ。それじゃあね、気を付けて帰るのよ~」
お婆さんは、トイレへ行ってしまった。
私も彼とこんな関係になれるのかな、と思いながら空になった缶を捨て、バイクに乗った。
帰りに、あの緑の車の運転席を見てみると、誰もいなかった。
――警察署によると、きょう未明、――山の休憩所駐車場にて、緑の車の助手席から70~80代の女性とみられる身元不明の遺体が発見されました。署は身元の情報提供を呼び掛けています。続いてのニュースです――
朝――と言ってももうすぐお昼になる時間に――起きてテレビをつけると、そんなニュースが流れた。
どうしてかはわからないがその時、今がお盆であることを思い出した。
――そういえば、今はお盆か。迎え火……は昨日の花火でいいとして、久々に実家に帰って、墓参りしないとな……。
うるさいセミの声を聞きながら、私はそんなことを思った。
デート 伽藍青花 @Garam_Ram
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