レピュブリック広場のマリアンヌ像

九月ソナタ

深夜パリでの出来事

深夜の散歩ができるのは、日本くらいではないだろうか。

アメリカでは深夜に歩くなんて、危険すぎてできない。


深夜の散歩で思い出すのは、GPSがなかった頃のパリ。

今でも、深夜の散歩なんてできるのかしら。


私はすごい方向音痴。それまでにパリには二回行ったことがあったが、案内人がいたので、問題はなかった。


でも、その時は私が妹を案内してふたりで行った。

妹はパリは初めてで、それに私よりももっと方向音痴。


ホテルを北駅のそばに取ったのは、ロンドンから鉄道を使ってきたので、到着駅が北駅だったから。地下鉄を使ってパリの中心にまで行く自信がなかった。


でも、パリにはセーヌ川が流れているから、川に沿って歩いて行けば、ノープロブラムなはず。ベルサイユ地区からだと、やがて左手にノートルダム、右手にルーヴルが現れるはず。さらに進めば、エッフェル塔だから、パリは簡単。


それでセーヌ川に沿って歩き始めたのだけれど、途中で川が消えて焦った。

後でそこは運河だったとわかったが、橋みたいなところを越えたら、また川が現れた。


川があれば、大丈夫。

私達は寺院、美術館を回り、シャンゼリゼ通りを歩き、凱旋門にも上った。

さて、問題はどうやって帰るか。


とにかく来た道を戻って、女神の像が見えたら、そこで曲がると暗記しておいた。

今考えると、目印はレピュブリック広場のマリアンヌ像だったのだが、私は少し手前のナシオン広場の像と間違えたらしい。

何度試しても、ホテルが見つからない。


夜中の二時まで歩き回り、ようやくこの像ではないと気がついた。仕方がないから、北駅まで帰ることにした。通りがかった女三人に駅の方向を尋ねたら、彼女たちも旅行者でホテルを探しているところだった。

ホテルは歩いている時、偶然に見つかった。


というわけで、私の「深夜の散歩で起きたできごと」は、パリで目印の銅像を見間違えて、歩き続けたこと。



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