KAC20234 二駅分の夜道
麻木香豆
🍲
俺は大学の同級生の美優と歩いていた。
両手に食材やジュース。最初は中村と俺と美優と中村の彼女の4人でパーティだったのに急遽俺ら2人に。
たく、中村。俺が美優好きって知ってるから……さすが幼馴染だ。でも先に童貞卒業しちまった。
最初鍋パしようよと誘ってきたのは美優。前から気になってて何人かで遊びに行ってだんだん少人数になってきて4人で鍋パすることに。
なのに前日キャンセル。スーパーに行って気づくと夜暗くなってて。二駅分歩いて彼女と共に夜の散歩気分。少し寒いけど楽しく喋ってて平気だった。
何せこれから鍋食べてしかも美優の一人暮らしのアパート……ああ、もっと暖かくなるだろう。
いや、まず告白しておつきあいOKもらって……童貞卒業!!
「ニヤけてる」
「美優もじゃん」
好感触だ。
すっかり夜だ。なんとかして出てきたら深夜一時。電車はもうなく歩く。行きは二駅分美優と歩いてたのになんか違う雰囲気の重い気持ち。
あの後美優のアパートに着いたら真っ白な鍋を出してきて体にいい鍋だからとお腹すいているのに二時間語られて玄関や質素な部屋に山積みされた段ボールの中にある同じく体にいい水も長々と語られながら鍋を食べたが普通の味だった。
そして美優に涙ながらに縋られて鍋買って、水買って! と。
だんだん集まりも人が減ってきた理由もわかった。
中村、俺を裏切ったな。彼女がそういう人と知ってて。
幼馴染にも初恋の女性にも裏切られて俺は一箱買うから縁を切ると言ってダンボールを抱えながら泣いて歩いた。そんな上京して一年目の冬であった。
「てかんじかなー」
と男がダンボールを抱えて泣きながら歩く少し野暮ったい青年を見てこう言った。
「どうやったらそんな妄想が思い浮かぶかわからんわ」
「すぐそう思い浮かばんと作家も大変よ」
と男は焼き鳥を食べ終えて屋台の店主にお金を渡して夜の散歩を始めた、その青年と逆方向に。
KAC20234 二駅分の夜道 麻木香豆 @hacchi3dayo
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