マリとマリン 2in1 睦

@tumarun

第1話 からひー

「翔、何食べるの?」


 昼時である。通用門から外へ出ようとすると翔は背中を叩かれた。


「つっ、加減をしてくれよな、茉琳。結構痛いぞ」

「へへぇ、ごめんなっし」


 振り返れば茉琳がいる。ブリーチして黄色に染めたロングヘアー、手入れが悪いのか毛が荒れて、ソバージュ風になってプリンの面積も広くなってきてる。ギンガムチェックのカーディガンにオフホワイトのパンツスタイルなのだが片方の肩が出ているので緩い印象を醸し出している。顔のつくりもいいはずなんだがピントがずれているように見えてしまう。


「私もお腹空いてるから、どっか連れてってよ。食べにいくなっし」

「俺は、企画モノの丼が出たから、それを食べる予定」

「私も食べてみたいぃ。連れてってヨゥ」

「お前、お嬢様なんだろ。丼なんて食べるのか?」

「そんな鯱鉾だった料理ばっか食べてないし。ハンバーガーだって好きよぅ」


 茉琳は口元に指先をつけて上目遣いで翔を見る。

「私とじゃいや?」

     グウゥ

 お腹が鳴る音が聞こえた。頬を染め、真っ赤になって下を向いたのは茉琳。


「ごめんなしゃい。一緒に連れて行ってくたしゃれ」



「136番のカードをお持ちの方、出来上がりました」

「137番のカードをお持ちの方、出来上がりました」


 丼が出来上がった。


「俺が取りに行くよ」

「やっさしいねぇ。おねがい」


 翔がカウンターへ取りに行って茉琳の前に置いた。


「なんの丼?」

「ビビン風丼」

「ビビンバじゃないの? ナムルは? ゼンマイは? ないの?」

「だからビビン風丼なんだよ」

「なーんか、騙されたような」

「騙されたと思って食べてみな、スプーンあるだろ。それで丼の中のもの混ぜる」

「そのまんま食べるのじゃなくて混ぜるの?」

「そっ、まぜまぜ」

「ぐちゃぐちゃ」

「口に出していうのはやめてほしいな」

「ぐちゃぐちゃ」

「茉琳さん」

「ごめんねっし」


「そろそろ、良い具合だから食べてごらん」


 茉琳は丼から一口分をよそうとおっかなびっくりと口に運んでいく。それに釣られて目が寄っていってしまう。面白くも可愛い顔をしている。翔の顔もほぐれてしまい笑っている。


「何、見てるし」

「今の顔は良かったよ。笑える」

「ひどいだっし」

「ごめん、ごめん。とにかく食べよ」


 味付けされた豚肉にキムチ、きんぴら、ほうれん草にネギを温泉卵にからませて、混ぜて混ぜて食べる。キムチの辛さが絶妙にスプーンを進めていく。翔は満足した顔をしていた。

 茉琳はというと目をバッテンにしている。それでいてパクパク食べている。


「茉琳、口元にご飯粒」


 口にスプーンを咥えて、キョトンとする茉琳の顔が可愛いと翔は思う。その時、茉琳の顔から表情が消えた。そして咥えていたスプーンを落としてしまう。まだかき混ぜていた具材が残っていたのだろう。豊満な胸で膨らむニットのミニキャミの上に飛び散ってしまった。

 慌てて店員におしぼりを翔は頼んだ。そしてそれで茉琳の胸元を拭こうとして正気に戻った。あたふたしていると茉琳が復帰した。


「私、やらかした?」


 泣きそうな顔で茉琳は呟く。


「気にしない、気にしない。これで拭ってね」

 翔は笑顔で茉琳におしぼりを手渡そうとする。すると茉琳はおしぼりを持つ翔の手を掴むとそのまま自分の胸元に押しつけた。


「私も気にしない。お願い、翔ぅ拭いて」


 茉琳は耳まで赤く染まっている。翔も顔が紅潮した。

そして翔は服越しとはいえ、茉琳の胸の柔らかさを思い出のライブラリに入れた。

 

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