第2話
ハンバーガーを買いに来たクラスメイトから聞いた。生産系の子たちは王城で戦いに向けて色々なものを作っているらしい。戦闘系の子たちは兵士の訓練を受けて、徐々に実戦に出ているらしい。このうち、勇者とか聖女とか剣聖とか賢者とかの子たちはダンジョンに行くことになったんだそうだ。力を磨いて魔王のいる場所まで旅をするという話もでているとか。
王都の人たちは毎日一生懸命働いて、同じような日々を過ごしている。王都の城壁の外では、国のアチラコチラでは魔物の出没が多くなってきて被害も増えているという。そうであっても今日と同じ明日が来ることを皆、願っている。
「お前はいいよな、ハンバーガー作ってりゃいいんだから。」
クラスメイトの男の子が突然絡んできた。他の子達に止められて問題はなかったけど。後から文句言ってた男の子の仲の良かった子が魔物と戦って死んだらしいと聞いた。のほほんとハンバークを焼いているように見える私に苛立ったんだろうな。クラスの中で1人だけ城下街の食堂で働いている事、1人だけスキルが役立たずだって思っていたのが、一番安全な場所にいるという認識に変わったんんだろう。それから徐々にクラスメートの姿を見なくなった。生産系の子たちも王城から各戦地の後背地などへ移動する人たちもでてきたという。
(コントンのレベルが上がりました)
レベルがコントンになった。
「店主さん、ごめんね。しばらくでかけてきます」
「気をつけていっておいで。戻ってくるのを待ってるよ」
しばらくはテイクアウトはお休みです。ため息一つ。仕方ないよね。戦況は思わしくないようだ。王都でも物が足りなくなって物価が上がってきている。各地からの輸送に滞りがでているとかいうし、王都周辺の農業地帯も魔物の出没が目立ちだしたらしい。隣国ではスタンピードが起きたそうな。よくハンバーガーを買いに来てくれてた冒険者の人達は、色々な話をしてくれた。魔王ではなくて、どうも瘴気が発生する場所があって、その瘴気によって魔物たちが発生するのだという話を教えてくれた。魔王じゃなかったんだ。瘴気を浄化するために、聖女と勇者一行が旅立ったらしい。彼女たちが失敗しなければ何も問題はないだろう。でも、レベルが上がってしまったから。
「くそ、この瘴気の濃度ではこれ以上進めない」
「ここから、中心に向かって浄化をかけてみるわ」
聖女一行は、瘴気の発生域の近くにまでたどり着いていた。瘴気の発生域周辺は荒野となっており魔物たちですらいなかった。聖女による浄化が始まった。だが、瘴気の漂う範囲は多少小さくなったようだが、残念ながら無くなりはしなかった。魔力が枯渇し、倒れ込んだ聖女を勇者が支えた。
「何度かに分けて、浄化を…」
聖女がそう言葉を紡ごうとした時、瘴気が光を放って消えた。
「…何が、起きた?」
まっすぐここまで歩いてきた。最初は馬車とか乗り継いだりしたけど、さすがにここまでは無理だった。電車とか自動車とかあればもっと早く来れたのになと思いつつ。ここまで魔物とかどうしたかって?それは、レベルが上がって自分の周囲に狭い範囲だけど結界みたいなのが張れるようになったから大丈夫。この結界に触れるとグチャグチャのバラバラになるので、魔物が来ても安心設計です。コントンさんのお仕事の範囲は、レベルが上ったら手で触れるだけから発展したんです。瘴気の中心部までたどり着くとそこには一人、男の人が倒れていた。随分前に死んだと思うのだけれど朽ちてもいなかった。どうにもこれが、瘴気の源らしい。そこから瘴気が溢れているから。その人に触ると非業の死を遂げた人生が走馬灯のように感じられ、最後に自分を不幸にした人達を、自分を殺した人達を、自分を救ってくれなかった世の中に対しての怨みつらみが重なり、運が悪いことに死んだ場所が邪気の集まりやすいところだったことと相まって、この瘴気域を形成していったのがみえた。この人が魔王といえば魔王なのかもしれない。
【コントン】
そう唱えると、男の人の体も思いも周辺の瘴気もみんな一気に分解した。偏って凝っていたモノが解きほぐされて、周囲に馴染んで澱みがなくなった。瘴気が失せて晴れ渡ったら、遠くに聖女一行が見えたので、慌てて見つからないように反対方面から帰ることにした。あんなのにこんな所で見つかったらえらいこっちゃ。
帰ってくるのにちょっと時間はかかったけど、無事に王都に戻りました。私が帰ってくる少し前に聖女達一行は王都へ凱旋してきたそうです。街中お祭り騒ぎだったとか。間に合っていればハンバーガーで大儲けできたのにとちょっと残念。
今日もお店でハンバーガーや餃子をつくって、看板娘やってます。スムージーも美味しいよ。
異世界でハンバーガー売ってます 凰 百花 @ootori-momo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
四方山話/凰 百花
★17 エッセイ・ノンフィクション 連載中 26話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます