カオスな心
石嶋ユウ
カオスな心
何が起きたのかもわからない。死んだらしい。何もない。ただ文字だけの存在と化してしまった。今さっきちょうど四十四文字だった。ああ、もう七十三文字だ。
ところでここは文字しかない代わりに自由なんだろ。どうなんだ、答えろ作者。うん? そもそも作者って誰だ? 俺か僕か私は誰だ? ぐちゃぐちゃだ!
俺か僕か私の体が死んだせいで、何かが揺らいでいる。だからこそここにはカオスしかない。ところで、今は何字だ? そうだった約二百文字を超えたところだ。どうやら俺か僕か私は七百七十七文字そこらで完全に存在が消えてしまうらしい。素晴らしい! これこそ混沌である! いえーい!
「おい、しっかりしろ! しっかりするんだ!」
おや、誰かの声がする。お前は誰だ。よくも俺か僕か私の貴重な残り文字数を使ってくれたな!
「戻ってこい! あんたはまだ死んでいない。死んだつもりになってるだけだ!」
はあ、なんだと。俺か僕か私はこの混沌が好きだ。愛してる! だからもうそっちには戻りたくはないんだ。放っておいてくれ。
よし、こうなったら残りの
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん。ダメだ。全然残り文字数が減らない。だが、残りの
そもそも、俺か僕か私は誰だ。そこすらも揺らいでいる。
「思い出せ! あなたは実験中に失敗して……」
え、なんだって? 実験がなんだって?
「だから、戻ってきて……」
いや、そう言われても、もう自分が誰だかわからない。どんなことをしてたのか、どんな生き方をしてたのか何もかもを忘れてしまった。もう一度、もう一度生きてみようか。そんなことを思った瞬間、目の前には死への扉。ついに、開かれ俺か僕か私は扉の向こうへ……。
カオスな心 石嶋ユウ @Yu_Ishizima
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