魔王様配信中。~全然魔王城へ辿り着かない勇者のために、魔王が攻略動画を配信するようです~

大入 圭

魔王城。

「あー暇じゃのー」


 魔王様は玉座の上で逆さ立ちをしている。


 なぜそんなことをしているかって?


 それは魔王様が仰った通り、暇だからである。


「勇者は一体いつになったら魔王城へやってくるんじゃあー」


 勇者は弱かった。

 あまりにも弱い為、未だに最初の洞窟でまごまごしていた。


「とはいえ玉座で逆立ちは、少々はしたないですよ魔王様」

「黙れ! お前は四天王の中でも最弱なくせに!」

「それはいま関係ないでしょう!」

 

 勇者のせいで、私が罵られてしまった。

 

 しかもその勇者。

 弱いくせに己を鍛えることもせず、勇宙舞ゆーちゅーぶという魔法で映像を飛ばす配信サービスを始めてしまったのだ。


 そりゃあ来ないだろ。

 もう世界を救う気概を感じないもの。


「そうじゃ! ワシもその勇宙舞ゆーちゅーぶを始めればよいのではないか?」

「無理でしょう。魔王様はナチュラルに人間のアンチが沢山いるのですよ? すぐ炎上してBANされるのがオチです」

「黙れ! お前は魔族からも沢山嫌われているくせに!」

「それはいま関係ないでしょう!」


 仕方ない。

 配信する為の魔道具を調達してこよう。

 玉座で逆立ちしているよりはマシだ。



 ◇ ◇ ◇



「おお、これで配信するのか!」


 魔王様は映像配信用の魔道具をまじまじと見つめ、目を輝かせている。

 いったいどんな配信をするつもりなのだろう。


「ところで魔王様、私が魔族から嫌われているというのは本当なのですか?」

「よし、これで勇者がまごまごしている洞窟の攻略動画を配信するのじゃ!」

「なんという名案! いつも馬鹿みたいに惰眠を貪っているだけなのに!」

「黙れ! お前は四天王のマドンナに告白してフラれたくせに!」

「それはいま関係ないでしょう‼」


 魔王様は颯爽と魔王城を飛び出し、動画配信の為に洞窟へ飛び立った。

 アンチコメントで傷つく魔王様は見たくない。

 私もリアルタイムで配信を見守るとしよう。

 あと誰だ。

 私がフラれたことをバラした奴は。

 


 ◇ ◇ ◇



「ただいまー」


 魔王様が帰ってきた。

 

 正直、配信は大盛況だった。

 だが大体は興味本位。

『魔王が自らダンジョン攻略とか草』

 なんて馬鹿にするコメントが散見していた。

 

 魔王様は魔道具を取り出し、配信を見始めている。

 アーカイブで自分の配信をチェックしているのだろう。

 ご機嫌を損ねなければいいが。


「なんということじゃ!」

「ど、どうされました?」

「勇者が炎上している!」

「え、勇者が?」


 魔王様が攻略配信をしたことにより、『なぜこんな簡単な洞窟を踏破出来ないのか』と炎上してしまっていた。

 

 それどころか『魔王様、美少女でヤバい』などと話題になり、魔王様のチャンネルはみるみる大人気となってしまったのである。


「おい、楽しいぞ! もう勇者いらんかも!」


 勇者いらんくなった‼



 ◇ ◇ ◇



 後日。

 

「おい! こんど勇者とのコラボが決まったぞ!」


 ああもうめちゃくちゃだよ‼





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魔王様配信中。~全然魔王城へ辿り着かない勇者のために、魔王が攻略動画を配信するようです~ 大入 圭 @fullhouse_k

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