占い

夕奈木 静月

第1話

 古い雑居ビルの階段を上り、二階のフロアに着く。昭和レトロな景色と匂いが当時を知らない私にも感じられる。


「今日相談したいのは恋愛のことなんです。遠距離恋愛中の彼との結婚……などを占って欲しくて……」


 私は『当たる』と評判の占い師の店を訪れていた。


「ふむふむ、その彼とはいつ頃からお付き合いされているので?」


 ベテラン、という言葉がぴったりの白髪の占い師が私の目をじろっと見て言う。


「3年前です。そろそろ私もいい歳ですし、将来のことも考えたいなと思いまして……」


「わかりました。少々お待ちを」


 水晶玉を見るところなんかは昔からの占い師そのものだけれど、この店の評判がいいのには必ず理由があるはず。


「うんうん、いい感じですよ。悪くない」


「ホントですか!?」


 ふしくれだった占い師の手指によって説得力が倍増される。


「ええ、ほらここ、見て下さい? キレイに向こう側が見通せているでしょ? 先行き明るい証拠ですよ」


 その後も占いは続き、様々なことが明らかになっていったのだが……。


 肝心の恋愛面以外の占いがひたすら続き、疲れてきた私。


 が、徐々に結果のおかしさに気づいてきた。


「ちょ、ちょっと! おかしくないですか!? どうして『待ち人来ず』なのに『恋愛運が最高潮』なんですか? あと、『変調をきたしやすい体調には要注意』なのに『トライアスロン参加が吉』ってやばくないですか?」


 占い師は私の突っ込みを予想していたかのように即座に答える。


「お客さん……ちゃんと看板見てくれました? 書いてあったでしょう? ウチでやってるのは『ごった煮占い』なんです。人生てのはぐちゃぐちゃなんです……。あれやこれやで矛盾が生じるのが当たり前なんです。そんな現実に基づいた占いをやってるんですよ、アタシは」


 ……そりゃ当たるって言われるよ。これだけ色んな要素を占って、かつ万人に当てはまりそうな占い結果を並べてればね。














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占い 夕奈木 静月 @s-yu-nagi

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