ソースコード
信仙夜祭
他人の書いたプログラム改修
「おーい……。これ書いた奴誰だ? 読めないぞ?」
目の前には、酷く個性的なプログラムコードが並んでいた。ソースコードとも言う。
最近は、ブロック化されたソフトも出て来たけど、古いプログラム改修を請け負うと、ぐちゃぐちゃのソースを読まないといけない場合がある。
「あ……。それ、数年前に辞めた奴です」
ため息しか出ない。
まあ、時間の無駄だ。目の前の問題に取り組もう。
「……。仕様書までぐちゃぐちゃだ。書いた本人にしか読めないじゃん」
こんなモノを納品して、数年動かしていたのか……。
動いていたんだよな?
今度は、改修の要望書を読んでみる。
「……。作り直した方が、速くないか?」
これは……、営業の連中が止めてた案件だな。
どうやら、ハズレを引いたみたいだ。
それと係長が、笑っていやがる。
俺は、数年前の契約書を探した。
「これか? ソフト開発要望書の中身は……、とりあえずまともだな。契約した先は、まともな会社だったけど、うちの営業とプログラマーが、初心者だったんだな」
幸いにも、そんなに大きくはない。それと、改修期間も長期間取られている。
短期間納期だと、徹夜しないとけない。だけど、最近は就業規則も厳しい。
「10年前が懐かしいな」
そんな、ぐちゃぐちゃのソースだった。
◇
「改修終わり……。テスト終わり……。時間は、かなり余ったな」
契約書を読んで、実際にソフトを動かせば、どんな処理をするのかは分かる。
あとは、仕様書とソースを自分好みに書き直せばいい。
営業と相談して、仮納品を行って貰う。
顧客に動作確認して貰い、契約書と齟齬がないかを確認して貰うのだ。
顧客にデバックをさせることになるけど、契約した期間よりだいぶ早いんだ。顧客側も喜んでいる。
係長は、苦虫を噛み潰した顔だ。俺に恥をかいて欲しかったみたいだ。
課長と部長は、知らんぷり。怒るのが、仕事の人たちだ。静かな分は、問題ない。
評価もしてくれないのが、問題なんだけどね。
独りで作業したい俺は、今の環境に不満を持っていない。まあ、何時転職しても構わないし。
「助かったよ。誰も引き受けてくれなくてね」
営業が、礼を述べてくれた。
「……あれだけ、ぐちゃぐちゃだとね。ほとんど作り直しでしたね」
「書いた本人しか読めないのは、どうにかなんないのか?」
「部署のトップが、あれだとな~。他の会社だと、どうなんでしょうね……」
営業がため息を吐いた。
人の出入りが激しい会社だと、こんなことは常にある。
そして、常に増え続けている。
「他人からすれば、ぐちゃぐちゃでも本人からすれば、読みやすく作ったんだろうな~」
まあ、そんな俺の作った仕様書も、他人からみれば、ぐちゃぐちゃなんだろうけど。
「飲みに行かないか?」
「……軽く、食事でお願いします」
ソースコード 信仙夜祭 @tomi1070
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