上手く書けたと思ったのに
おともミー@カエル
今度こそは!
「あと、105文字」
カタカタカタ・・・
「あと・・・っ、27文字」
カタカタ・・・、
「やった~!!777文字クリアー!」
パソコンのキーボードから手を離し、思わずガッツポーズ。
歓喜の雄叫びをあげた妻トリに、夫ウマは怪訝そうな視線を向ける。
「なに、その777文字って」
よくぞ聞いてくれました!と妻トリはぐるんと椅子を半回転させ、ソファーでコーヒーを飲んでいる夫ウマに、満面の笑みを見せる。
「カクヨムのイベントでね、出されたお題に対して777文字で文章作るの。3題目でやっとピッタシ☆カンカン♡」←歳がバレるからヤメレ
「ふーん、良かったね」(棒読み)
「つれないな。難しいんだよ?お題は《ぐちゃぐちゃ》、なんだけど。ウマ君は何を連想する?」
「お題がぐちゃぐちゃ?」
「《ぐちゃぐちゃ》、に関わる文章を作るんだよ」
ああ、そういう意味ね、と夫ウマは興味なさそうにコーヒーを一口。視線を感じて顔をあげ。未だにこちらを伺っている妻トリと目が合うと、答えなきゃいけないの?と眉を寄せる。
「ぐちゃぐちゃ・・・ねぇ。脳ミソかな。もしくは事故現場」
・・・汗
「聞いたわたしが愚かだったよ」
夫ウマはホラースプラッタ好きで、夜中に良く妻トリのパソコンでNetflixを視聴している。
それは構わないのだが、時々再生途中で寝やがるから、開いた時にまさしくぐちゃぐちゃシーンがドーンと一面に表示されて、朝から近所迷惑な悲鳴をあげるのは、ホラーが大嫌いな妻トリ。
「つれないな。ホラーやスプラッタ映画は血の芸術なんだよ。知ってる?撮影に使われている血にも種類があって、吐血にはグレープジュースに片栗粉混ぜて・・・」
あ、なんかスイッチ入ったっぽい?
「いや、そんなマニアな話いらないし」
「ぐちゃぐちゃ聞いてきたのそっちじゃん」
「悪かったよ。わたしが愚かだったよ。ねえねえ、ぐちゃぐちゃついでにさぁ、これ読んでみて!自信作なの!」
目を輝かせながら、パソコンの画面を夫ウマに見せる妻トリ。
え~めんどくさーと言いながら、ちゃんと真面目に読んでくれる夫ウマは、実は雑誌編集部勤務。
「・・・」
「・・・ねぇ」
「・・・」
「ねぇ、どおよ。今度はイケてると思うんだけど」
「・・・」
「ねぇってば!なんで777文字読むのに、そんな時間かかるの?」
「・・・あのさぁ」
「なになに?」
「トリちゃん姉さんのメモネタね、決して悪くないと思うよ」
トリ姉は香港ワーキングガール。3か国語を自在に話す彼女は、バックに常に忍ばせているメモに色々書きとめている。瞬間の情報を速筆で書きなぐっているそれらは、文字のようで模様のようで、たまに本人が見ても理解不能な、ぐちゃぐちゃ感。
「でしょ、でしょ!」
「理解不能な文字を、じぶんなりに面白おかしく解読する発想も斬新だし、目のつけどころも悪くない」
でも、と言葉を区切る夫ウマは完全たる編集者の顔。
あ、これズバッと切り捨てられるパターンかも。
どきりと身を正す妻トリ。
「ここでの使い方はぐちゃぐちゃ・・・じゃなくて、ごちゃごちゃ、なんじゃない?トリちゃん、日本語の使い方間違えている」
ホレ、とご丁寧に解説のサイトを開いて説明してくれる夫ウマ。
《ぐちゃぐちゃ》とは、物事が美しい形やあるべき姿をしていない醜い状態
《ごちゃごちゃ》とは、物事が必要以上に多く、絡み合っていたり、整然としていない状態
がーん( ̄▽ ̄;)
妻トリのカクヨムへの挑戦は続く。
(半分挫折しているかも)
おわり
上手く書けたと思ったのに おともミー@カエル @trytomoji
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