ストロベリーポンポン

すっぱいとすぐぐちゃぐちゃになる甘いものずきな女

「あっまーーーーーーーーーーーーーい!!!!ちょーーーーーーーーーーーーーーーおいしいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


ストロベリーが好きだ。あまあいストロベリーを食べると、つむぎはもう近所に聴こえそうな大声でその甲高い声をまぁ、恥ずかしげもなく叫ぶ。その声に、俺はの方が恥ずかしくなる。


紬との関係は…………、もったいぶらせてすまん。兄妹きょうだいだ。紬は、甘いものが大好きで、小さな頃は…あったのか、無かったのか、もうそれはそれは肥満児だった。小1で、確か49キロを超えていた。しかし、俺の方はと言うと、甘いものは大嫌いだ。小さな頃にこいつを見てきたせいで、俺の甘いもの嫌いは突進してゆくイノシシのように、その姿あまいものは俺の目の前から去ってゆく。しかし、紬にはもっと厄介な好物がある。



『梅干し』だ。



昔、ばあちゃんが漬けてくれていた、梅干しを、毎日毎日食べていた。一粒食べると、頭をぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ…。それが紬の癖なのだ。

「お前は高血圧になるぞ」「お前は糖尿病になるぞ」「お前はメタボだぞ」「お前は男できないぞ」「俺が兄で良かったな」

俺は常々、紬に言っていた。本人も、そう思っていたに違いない。紬は、太っているという事実から生まれる、「恋愛」が出来ない、と言うコンプレックスで、(何故か)時たま、戒めのように、すっぱいものが食べたくなる。のだと言う。


梅干しを食べると、紬は、大泣きする。


ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと頭を、髪の毛を指に引っかからせて、涙を流す。


こんなこと言うのもあれだが、兄として、そこは何となく可愛い。


本当は痩せたいし、奇麗になりたいし、男の人とも付き合ってみたいだろうに…。


梅干しを食べ、泣く妹に、俺は1番の慰めを施す。


『ポンポン』


だ。


そう、只々、泣いている紬の頭に、『ポンポン』と手を乗せる。


「大丈夫だ。お前は、大丈夫だ」

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ストロベリーポンポン @m-amiya

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