KAC20233 ぐちゃぐちゃ

この美のこ

はい、次の方どうぞ!

 「文章を書く時に、あれもこれもと、書きたいことがたくさんあって、それをどう書いたらいいのか分からない。そもそも、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまい、よく分からなくなってしまうんです。先生!」

「心がぐちゃぐちゃになって苦しいんです。先生!」


 私は『やがてなおる科病院』の院長の春野というが、こんなことを言ってくる患者が今日はこれで7人目だ。

みんな口々に「頭がぐちゃぐちゃ」とか「心がぐちゃぐちゃ」とか言ってくる。

どうも厄介な『ぐちゃぐちゃ病』にかかっているようだ。


 私はニッコリ笑って

「心配ご無用。私に治せない病気はありません」と答える。

そしてこう聞いてみた

「頭の中がぐちゃぐちゃになる症状はいつ頃からですか?」

「それは3月6日の正午過ぎからです。ぐちゃぐちゃして頭がおかしくなりそうです」

「なるほど、そういう事なら問題ないでしょう。5日もすれば自然に治るでしょう」

「先生、そんなに簡単に治るものでしょうか?頭の中がもうぐちゃぐちゃなんですよ」

「まぁ、まぁ、そんなに深く考えすぎないで。深呼吸、深呼吸。これはあなたが心の中でぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃって思ってるからに他なりません」

「はい。ぐちゃぐちゃって思ってます。ぐちゃぐちゃな物、何かないかなって探してます」

「ふむふむ、やっぱりそうですか。それなら、ぐちゃぐちゃって紙に書いてごらんなさい。777文字以上書き出したらスッキリするはずです」

「そんなもんですかね?」

「そうです。そんなものです。5日もすれば自然に治りますよ。5日経っても治らなかったら、もう一度来てください」

「分かりました。ありがとうございます」

「はい、お大事にしてください」


「先生、次の患者さんも頭がぐちゃぐちゃらしいです」と看護師。

「そうか、お通しして」

「先生、聞いて下さいよ。もうぐちゃぐちゃなんですよ……」


患者は続く、どこまでも……。



お陰様でレギュラー賞を頂きました。

近況ノートに画像あります。

https://kakuyomu.jp/users/cocopin/news/16817330656425504305

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