隔世夢の戦士たち

mikio@暗黒青春ミステリー書く人

対決

 二人が向かい合っていた。


 二人の戦士が向かい合っていた。


 二人の戦士が武器を握りしめて、静かに向かい合っていた。


 一人は銃士。短銃ピストルにしてはやや長い銃を、少しの震えもなく構えている。


 一人は剣士。手元から真っすぐに伸びた剣を天に向け、泰然と構えている。


 具体的にはこんな感じ。


〇┏―               │●

△                 +▲

ハ                  ハ


 ここは隔世夢カクヨム。甘美な夢と辛く苦しい現実の狭間にある場所――。


 彼らは隔世夢戦士。夢のため日夜死闘を続ける浮世離れした男たち――。


「いつ、はじめるかい?」


 銃士が尋ねる。相変わらず構えた銃口はぴくりとも動かない。


「もう、はじまってい――」


 ズガアアアン!! 剣士が言い終わるよりも先に、銃士は引き金を引いた。


 具体的にはこんな感じ。


〇┏―≡・             │●

△                 +▲

ハ                  ハ


 必殺の銃撃は誤りなく剣士の頭を捉えている。剣で銃弾を切り落とすなど創作でなければなしえぬこと。故に剣士の敗北は約束されたも同然であった。しかし――。


「鴨川の水」


 剣士は銃弾の速度よりも早くそう言った。動揺はない。少しの動揺もなく、ただ早口で剣士はそう言ったのだ。


 具体的にはこんな感じ。


〇┏―≡・|鴨川の水《かもがわのみず│●

△                 +▲

ハ                  ハ


「!」


 銃士は「鴨川の水」という声の前面にバリアーのようなものが浮かび上がったことに気づき、目を剥いた。


 剣士の喋りは早口だった。そのあまりの早さは、ルビの終端を示す「》」が間に合わないほどであった。


 そう。隔世夢では間にひらがなが含まれている文にルビを振るときは、文頭に「|」を入れなければならない仕様となっている。剣士はこの仕様を生かし、ルビの終端を示す「》」が間に合わないほどの早さで「鴨川の水」と叫ぶことで、銃弾を防ぐバリア――すなわち「|」を出現させたのだ!


 ガキイイイン!


 銃士の銃と剣士のバリアがぶつかり合い、虚空に消える。矛ならぬ銃弾と、盾ならぬバリア、どちらが強いのか? そう問われれば楚人ならずとも黙り込むしかない。銃弾とバリアは全くの互角であった。


「だが、わたしには剣がある。銃使い、お前の負けだ」


「早計だぞ、剣使い」


 剣士の言葉にそう応じると、銃士は持っていた武器をやや低く構えた。


 具体的にはこんな感じ。


〇                 │●

△┏―               +▲

ハ                  ハ


「我が奥義、傍点二重打ちを食らえっ!」


 銃士が咆哮と共に引き金を引く。すると一つではなく、二つの銃弾が剣士に襲い掛かった!


 具体的にはこんな感じ。


 〇                │●

 △┏―    ≡        +▲

 ハ                 ハ


 そう。銃士は隔世夢の傍点挿入機能を利用して、一度に二つの銃弾打ち出したのだ!


「くっ」


 さしもの剣士も二つの銃弾は躱しきれず、被弾してしまう。


「肩に一発、足に一発。うまいな。致命傷だけは避けたわけか。だか、それもいつまで持つかな!」


「ただ天のみぞ知る――」


 剣士は傷口から噴き出してくる血を気にすることなく、己が武器を銃士に向けて構え直す。


 上から見るとこんな感じ。


〇―               ―●


「ならば死ね! グチャグチャになるまで撃ち続けてやる!」


 ズガアアアン!! 再び銃声が響き渡る。間合いは変わらず、銃士に有利。いかに優れた剣士であっても、この距離を一呼吸で詰めることは能わない。


(それでも一か八か、前に向かってくるかも知れない)


 前進してくるならば、そこを狙うのみだ。銃士に油断はない。あるのは必殺の意思だけ――。


「!」


 銃士は驚愕した。剣士は前に進むのでもなく、横に避けるのでもなく、後ろに下がったのだ。銃を相手にしてそれだけはありえない選択肢だった。


「本作はiPhone8(Safari)環境・横書き表示にて動作確認をしております。環境によっては正常に表示されないことがありますがご容赦ください」


 そう言うと同時に、銃士の視界から剣士の姿が消え去った。否。剣士はいた。銃士にとってあまりにも予想外の場所に。


 具体的にはこんな感じ。


〇―                  ―●


「右端縮地」


 そう。iPhone8(Safari)環境・横書き表示では、一行に表示できる文字数は20文字まで。たった数文字分後ろに下がるだけで、右端での折り返しにより剣士は銃士の真横へと移動したのだ


 ザン!


 一閃。剣士は銃士の首を体から切り飛ばした。具体的にはこんな感じ。


   〇<やられたぜ

│● ॥

+▲ △┏―≡

 ハ ハ


「お前もわたしの夢ではなかったようだな」


 ここは隔世夢カクヨム。甘美な夢と辛く苦しい現実の狭間にある場所――。


 彼らは隔世夢戦士。夢のため日夜死闘を続ける浮世離れした男たち――。


―――――――――


「という話を書いたんだけど、どうかな?」


「どうかなって言われても……て言うかそもそも論として、テーマにマッチしてなくないですか? キャラクターの『グチャグチャになるまで撃ち続けてやる』って台詞だけじゃ苦しいですよ」


「ああ、それならほら。iPhone8/Safariでしか表示確認してないから、多分ディスプレイサイズによっては多分表示が」


「ああ。はい。わたしのスマフォだとぐちゃぐちゃですね。オチはぐちゃぐちゃと言うよりグダグダですけど」


「アッ、ハイ」

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