ぐちゃぐちゃ

祇園ナトリ

ぐちゃぐちゃ

 私の心はぐちゃぐちゃになった。

 ある事実に気付いてしまったあの日から。ある真実に触れた、あの日から。


 私にはずっと前から好きな子が居た。いつも冷静で、とても頭が良くて、でも時折、年相応の可愛い笑顔を見せてくれるあの子。笑った顔も怒った顔も、なんならくしゃみの一つだって好きだった。


 あの子が喜ぶなら何だってしたし、あの子の抱える悩みにも真剣になって一緒に向き合ってきた。毎日一緒に帰ったし、夜にふらっと出かけた時に偶然出会って、少しの間話し込む事だってあった。


 あの子の存在が私の幸せだった。だから私は、あの子の幸せの為なら何だってする――そうだ、命だって賭けてやる。そう、心に決めていたのだった。


 ただある頃から、事情があってしばらく会えない時があった。

 私は別の道を歩いていたけれど、それでもあの子の事を忘れる事は無かったし、いつかまた会いたいと心の底から願っていた。


 そうしていつしか気付けば、私は大学生になっていた。幼かったあの頃の私は居ない。もう、大人の私がそこに居た。

 そんな私に、あの子はまた機会を与えてくれた。またあの子に会える時が来たのだ。


 久しぶりに会った彼女は変わらない。あの頃のままの彼女の姿がそこにあった。嬉しくて嬉しくて、私の心は歓喜に打ち震えていた。

 初めはやはり少しすれ違いを起こしてしまう事もあったけど、それでもまた彼女と前のように仲良しに戻る事が出来た。それどころか、彼女に好きだと伝える事が出来た。前以上に、彼女と仲良しになる事が出来たのだ。


 幸せだった。幸せだったんだ。

 私が、あの事に気が付くまでは。



 私がそれに気が付いたのは、ある友人達と通話をしている時であった。


 友人らは私の悲鳴と過呼吸を延々と聞かされながら、各々別のゲームをしていた。多分、うるせぇなこいつ等と思われていたと思う。



「アハァこのイベント懐かし〜! アホな事やってるの最高に男子高校生って感じだよなぁ〜!」


「あ? 高校生とか言うなよナトリ、こっちにもダメージ入るだろうが」


「ははは我々も歳をとったな――えっ待って十五歳? 待ってこいつ十五歳!? え、十五……あ、え、じゃあ最推しも十五歳? え? ちょっと待って、え??????」


 そう、気が付けば、推しが遥かに年下になっていたのだ。

 それに気が付いた瞬間に、私の心はぐちゃぐちゃになった。同時に、三人の友人たちも被弾したのであった。



「なんかナトリ急に自爆したんだけど」


「私たちにもダメージ入るから止めて……」


「草」




 追記。

 最推しは四月二十七日に誕生日を迎えていたので、ゲーム内では十六歳でした。それでも彼女は年下です。どうして? 出会った頃は年上だったでしょう。

 どうして、どうしてなの初代探偵王子。


おわり

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ぐちゃぐちゃ 祇園ナトリ @Na_Gion

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