第39話 襲撃

激しい爆音と振動に俺とロモは目を覚ます。


「なんだ今の音!?っておい・・・・」


獣人はいつの間にか服を脱ぎ捨てベッドに潜り込んでいた。


「外からにゃ・・・もっと見たいかにゃ?」


「お前は服を着ろ。」


下着姿のロモが居たがそれどころではないので無視して急いで音の方へと向かう。

「襲ってくれてもいいにゃけどね・・・」


「今、襲われてそうなんだが・・・。」


俺は窓から辺りを確認し、屋敷の敷地内の森林が燃えていることに気がつく。


「結構燃えてるな」


「凄いにゃね。」


「まさか、ダンジョンからモンスターが・・・」


「急ぐにゃ!」


俺は聖剣を取り出し窓から飛び降りる。

そしてドラゴンをイメージして飛び立つ。


「背中に抱きつくなっつーの」


ロモは俺の背中に頬ずりする。

「無理にゃ・・・」


森林の付近を見るとナシェが杖を構えて辺りを見回していた。

「ナシェー!!」


「コウくん!危ない!」


「!?」


次の瞬間横から凄まじい衝撃を受けドラゴン諸共俺たちは引き飛んだ。

それは相当な質量を持った何かにぶつかったような感覚だった。


「なっ!」


「にゃ!?」


俺の視界に写っていたのは聖剣で変身したドラコンによく似た黒龍だった。

森林に墜落した俺は辺りを確認する。


「いてて、大丈夫かロモ・・・」


ロモに覆いかぶさるように俺は倒れていた。


「だ、大丈夫にゃ。フーッ、そのままでいいにゃ」


ロモが馬乗りになり、俺に抱きついてきた。


「お、おい!こんな状況で発情期かましてる場合じゃないだろ。後で相手してやるから我慢しろ。」


「あ、そうだったにゃ!言ったにゃね・・・」

ロモはニヤリと笑う。


黒龍はゆっくりと飛行しながらナシェの方に向かっていた。

「目的はナシェか・・・。」


そして次の瞬間、屋敷の方から放たれたであろう、リンのビームが黒龍に直撃する。


「よし。」


メキメキと音を立てながらビームが黒龍の首元を薙ぎ払うも傷一つ付いている様子がなかった。


「効いてないようにゃ・・・」


「あの耐久力・・・・アカネか。」


俺は麻痺薬を取り出しロモに渡す。


「ロモ、再びドラゴンで接近するから麻痺薬をあいつに。」


「わかったにゃ。」


そしてドラゴンは飛び立ち黒龍に接近する。

俺は透明なドラゴンをイメージする。


「ナニ、キエタノカ?」


黒龍は少し動揺し、油断が生まれる。

俺はそこを見逃さなかった。


「あの黒龍、喋れるのか・・・今だロモ!」


「にゃ!」


ロモは麻痺薬が入った瓶を投げる。

そして黒龍に直撃し、翼の一部に麻痺薬が付着するも飛行し続けていた。


「あいつ・・・・、あらゆる耐性を持ってるんじゃないかにゃ!?」


「無茶苦茶だな・・・これしかないか。」


俺はあることを思い出し、叫ぶ。

あの戦いで元嫁の手を知っていたからこそ出来る芸当であった。


「アカネ!!!」


次の瞬間ドラゴンの様々な部位で爆発が起こる。

空中で黒龍は連続して爆風を叩き込まれ荒ぶったように舞った後、地面に墜落した。


「よし!」


「やったにゃ!」


倒れていた黒龍の翼がピクリと動く。


「まだ動けるのか・・・」


そしてナシェに対して叫ぶ。

「そこから離れるんだ」


「うん!」


しかし起き上がった黒龍は走っていたナシェを掴む。


「ミツケタ、イケニエ。」


「生贄!?どういうことだ!」


「きゃー!」


ナシェは咄嗟に魔法の加熱を唱える。

鱗の隙間から炎が吹き出すもやはり効いていないようだった。


「ナシェ!」


「内側からの攻撃も効いてないにゃ。もしかすると私と同じかにゃ・・・」


「不老不死か・・・・、仕方ない。」


俺は未来改変の能力をオンにし銅の剣を取り出す。

未来改変は本来の因果を捻じ曲げ言葉通りにする強力なスキルだ。

完全耐性であろうがこれを持ってすればあの黒龍でさえも倒すことが出来ると確信していた。

しかしこの強力な能力には弱点と言うべき制約がいくつか存在した。

言葉による発動のため不本意に発動してしまうことと、対象を直接改変は出来ないということであった。


「この剣はあの龍を殺す。」


この様に剣といった媒介物を通してでしか対象に改変の影響を与えることができないのだ。

当然、媒介物が消滅すれば効果も消えてしまう。

あのテウリアで勝利を収めることが出来たのはこの制約にいち早く気が付くことが出来たからであった。


俺が言葉を唱えると黒龍の方へと凄まじい勢いで飛んでいく。


「コウ、未来改変かにゃ!?」


「あぁ、これならいけるだろ・・・」


剣が発射されたと同時に黒龍は呟く。


「ゲート!」


「空間転移の魔法があるのか!?」


黒龍の周辺の空間が歪みだす。


「コウくん!助け・・・」


「ナシェー!」


次の瞬間、黒龍はナシェと共に消えて行った。

他の制約・・・それは対象がある程度離れた効果範囲外にいると効果が消えてしまうことだった。

銅の剣はその対象を見失ったのか重力に従い地面に突き刺さった。


俺は突然の事態を理解できず、降り立った地面で力が抜けたように倒れる。


「本当に・・・あんな簡単に・・・・」


「こ、コウ!しっかりするにゃ!」


ロモが俺のぐったりとした体を支える。

俺は出来る事を考え、タブレット端末を取り出し呟く。


「知己、アカシックレコードで転移先を予測するんだ!」


「申し訳ございません、未来改変の影響でその・・・」


「くそっ、何でもいい!奴の正体か転移先を特定するんだ!」


「申し訳ございません、衛星画像に変化がないので転移先は屋内としか・・・」


「このっ!」


俺は怒りに飲まれタブレット端末を地面に叩きつけようとする。

ロモがそれを止めるために俺に抱きつき、呟く。


「コウ、一旦落ち着くにゃ!焦ってもナシェは帰ってこないにゃ。」


俺はタブレット端末を降ろし、泣きながら呟く。


「今までこういった事に対処できるように努力してきたんだ・・でも無駄だった・・・」


ロモが俺の頭を撫でながら呟く。

「無駄じゃないにゃ・・・この世に無駄なことなんて一つも無いにゃよ。」


「でも・・・・。」


ロモが更に強く抱きしめてくる。

「お前があの時、最後まで諦めなかったから今、私がここにいるんだにゃ。」


「あぁ・・・」


「辛くなったら、私に甘えると良いにゃ。」


「ありがとう・・・」


「にゃ!」

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ものひろいの能力もらったけど魔法と恋愛に夢中です。 紫雲くろの @murakumokurono

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