ぐちゃぐちゃ遊びをしよう!

風と空

第1話 大人になると出来ない事

「ぼくもてつだう!」


 晴天の休日。家のガレージで愛車の洗車をしようとしている中、5歳の息子が玄関から走ってくる。玄関には「お願いね」と口パクで頼んでくる妻の姿。


 いつも妻に任せっきりだしなぁ。仕方ないか。


「よおし、拓也たくや丁度良いところに来た!今から拓也を洗車係に任命する!」


 ガレージについている水道に延長ホースをつけてホースを拓也に渡す。嬉しそうにホースを持ち、車の近くまで行く拓也。


「よし、拓也!悪の汚れ軍団を退治しろ!」


 掛け声と共にキュッと蛇口をフルオープンにする。


「ウォータージェットはっしゃ!」


 拓也もノリノリで、シャワーヘッドをジェットモードにしている。


 あ〜あ〜、跳ね返る水で既に濡れてるじゃないか。……でもまぁいいか。子供ってなんでも全力でやるもんだしなぁ。


 よし!


「拓也隊員!こちらにもまだ潜んでいる悪の軍団が!」

「それはいかん!すぐにぼくめつせねば!」

「うわぁ!拓也隊員!汚れが襲ってきました!」

「いかん!すぐにたすける!」

「ぎゃー!拓也待て!ジェットモードでこっち向けるなぁ!」


 …… まぁ、こうなるわなぁ。

 

 結局洗車で服は水でぐちゃぐちゃ、車は中途半端に汚れは取れた状態に。


 それでもミストモードで虹を作ったり、大きくなった拓也を肩車しながら洗車したりして拓也と童心にかえって遊んだ。


 うちの奥さんそれ見て呆れてたけど、流石なんだよなぁ。


 くしゃみをした拓也を連れて家に入ると、「はーい、そのままお風呂場に直行してくださーい」ってちゃんとお湯を貯めていてくれた。


 二人で脱衣所で服を脱ぎ、洗濯機に放り込むとそのままお風呂にドボンッと入る。


「はぁぁぁぁぁぁぁ」

「あったかーい!」


 春になってあったかくなってきたとはいえ、かなり冷えたみたいだ。つま先から頭の先までじんわりとあったまってくる。


 あったまったら今度は泡泡祭り。


 「パパ!ソフトクリーム!」

 「お!いつから拓也はお尻にしっぽ生えていたんだ?」

 「パパ!おもちどうぞ」

 「どうだ!パパもママみたいになったろ」

 「ママもっとちいさいよ」


 シャンプーで泡だった髪でソフトクリームやボディーソープの泡を思いっきり使って、餅の形にしたり妻の胸の大きさにしたり、いつもは叱る事も今日は大判振る舞いだ!


 お風呂場の壁に泡が着きまくってぐちゃぐちゃになった時に響く妻の怒声。…… もしかして拓也の言葉聞いてたか?


 今度は拓也とシャワーで泡軍団を退治する。「あわぐんだんをたいじする!」という拓也の言葉にほっこりしつつ、泡を洗い流してお風呂を出る。


 ふかふかのタオルで拓也を包み、しっかりタオルドライをして二人で揃っていい匂いのするキッチンへ。


 今日は拓也の好きなミートソースだなぁ。


 「お疲れパパさんには、これもどうぞ」と缶ビールに唐揚げを出す妻には敵わない。拓也には牛乳だ。


「「プハア!」」


 と泡髭とミルク髭をつける俺と拓也を見て、にっこり笑う妻曰く。


「兄弟みたいな親子ねぇ」


 すまんな。大人が子供に与えられるのは、楽しい思い出もあるからなぁ。制限させるだけじゃなくて、たまにはいいだろ?


 ま、後でしっかり後始末も教えるからさ。

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