あらまァ懐かしい!
活版印刷職人さんとは。
学生時代、私は美術学校出身でして。
授業で携わったことがありました。
折りしもオフセット印刷が台頭し、
華々しく一世を風靡し始めた頃のことでした。
まだ無くなってはいない印刷技術だから経験しておけ、と
活版印刷も授業に組み込まれていたのです。
そして日本語の活版印刷では「文選」というのが必須になります。
大量の活字の中から、原稿に合わせて一本一本
拾った活字を入れる平箱がねえ、片手で持つの。
重いんですよ、鉛ですもの。
職人が男性陣に偏るのも分かるというもの。
え、字が少なければ軽いだろうって?
冗談言っちゃあ嫌ですよぅ。
童話やラノベ、中扉。
たとえページに一行『坊ちゃん』でさえ。
空白部分にゃ入るのですよ、その名もズバリ『空白』が。
刻印されていない活字のそれを、右の上から左の下へ。
きっちりかっきりずっしりと
さながら柱状節理がごとく。
ぷるぷる震える左手で、詰めて並べて引き締めて。
女子生徒達は筋トレ状態。
アレをひっくり返した日にゃぁ……ふ、ふふふふふ。
アルファベート順を幾つか入れ替える?
はッ!
可愛いもんじゃございませんか。
こちとら日の本、漢字の国の人だもの。
ひらがなカタカナ、アラビア数字に当用漢字、各種記号に略号が。
ざっと数えりゃ二千と五百。
当然使用頻度の高い文字は一つじゃ足りず、何本も揃えてあるわけで。
これが明朝ゴシックその他諸々、フォントごと
サイズ(ポイント)ごとにあるわけですよ。
遍歴職人、腕を磨きに渡り歩くなら
いっぺんこっちに来てみやがれってなもんです。
などと吠えてみましたが
中国の職人さんからは鼻で笑われるんでしょうねえ。
>ルンペルシュティルツヒェン
この名前。
随分前にアニメ版の『西の善き魔女』を
数話だけチラッとみた時に聞いたのが初めてでした。
向こうの童話に出てくるキャラクターなのでしょうねえ。
面白い響きの長い名前で気に入ったのを覚えています。
(でも調べなかった)
> 人間は神の前で皆同じと考えるプロテスタント
(ただし同門宗徒にかぎる)が後に付きますけどね!
洋の東西を問わず、その土地に根付いた古き神々や精霊たちが
後から来た新興勢力に追いやられてしまうのは
なんとも遣る瀬無く寂しいものです。
我が家も家としてはお寺さんの檀家ですが
個人的には日本古来の神道のほうが好きなので
古き神々に申し訳なく思っています。
後から来て図々しく追いやってごめんなさい!
八百万の神々の方が
強硬な一神教よりもずぅっと懐が広いと思うんですけどねえ。
さて本編。
お題に沿って組み上げたお話なんでしょうけれど
よくぞここまで見事に歴史や宗教、庶民の生活(もっともキリスト教は生活と切っても切れませんが)までをも織り込んで
一枚のタペストリーに仕上げてくださったものと感服致しました。
イェルクにティルはもちろんのこと、追いかけてくる職人まで
言葉の端々に現れる性格、心と体重がそこにある。
なんと生き生きと輝いていることか!
描写力、構成力、裏付ける知識の厚みと広さ。
⭐︎三つではとても足りないです。
後ろに『掛ける3』くらい付けておいてください。
素晴らしい作品をありがとうございました。
……でも最後に付け加えた一文がとっても心配。
それやっちゃダメなやつ。
無事に生き延びていてくれますように。
さてさて
またも1人の感想にあるまじき長文になってしまいました。
本当に長々々と失礼いたしました。
また他作品にもお邪魔させてください。
たった一つの問題は
素敵な作品が多すぎて
こちらの執筆時間が激減すると言うことかしら。
……休み休み拝読に参ります
ぎゃあっ 昼休み終わってるううううううううぅぅっ!
それではまた!(脱兎)
作者からの返信
てるるさん
なんと読み応えのある素敵なコメントでしょう!
こちらのコメント欄にしまっておくのは勿体ない、エッセイで公開していただきたいくらい面白いお話、ありがとうございますヾ(≧▽≦)ノ
美術学校のご出身! それであんなに美麗な絵とデザインを生み出すことが可能なのかと、非常に腑に落ちました✨
活版印刷の授業だなんて、楽しそう~とわくわくしたのも束の間、あ、平箱を片手で……空白部分、西洋で言うインテルってやつですね♪ え、全部鉛……? なんだか私の腕までプルプルしてきまして(笑)
言われてみれば、ぎっしり詰めものをしないと駄目ですよね💦
そして日本語で使用する活字の多さ! 想像したら気が遠くなりました。
西洋の遍歴職人が日本の活版印刷所へ修行に来たら、レベル999では足りないくらい上がりそうです( *´艸`)
中国は漢字しかないので、また目が回りそうな……! 日本とどっちが大変なのでしょうね!?
そんな大変な活版印刷ですが、実際の印刷物を見るとなんとも表現しがたい味わいがあって、インクの滲み方や活字の置き方……印刷物なのに個性や温もりがある気がして、すごく好きなんですよねー。
『大人の科学マガジンシリーズ』の「小さな活版印刷機」がちょっと欲しいお年頃です。
『西の善き魔女』は私、小説で持っています♪
ルンペルシュティルツヒェンは元々グリム童話に出てくる小人(悪魔)で、子供の頃から私も面白い響きだなあ~と思っていて、お気に入りだったのです^^
>ただし同門宗徒にかぎる
全くその通り! やはり私も日本気質の判官贔屓が身に染みついているのか、世界宗教や帝国といったものに淘汰されてゆく神や民についつい肩入れしてしまうタチでして、八百万の神という考え方が一番平和ではないか……と心で呟いています。
ただ、キリスト教やイスラーム教が生み出した美術や文化にも目を瞠るものがあるので、なんとも複雑な思いです。たとえばバロック美術なんかは、一神教の強烈な光があればこそ生み出されたものだよなあと思うので……。
そして本編について、様々な背景までしっかり読み込んで堪能してくださって、本当に嬉しく思います!( ;∀;)
この手のお話をてるるさんのように実際活版印刷を学んだり、恐らく美術史に絡んでキリスト教にも造詣が深いのではないか……と思われる方に読んでいただき、しかも楽しんでいただけたというのは、純粋に深い喜びです✨
最後に付け加えた一文は確かに余計で(笑)
宗教改革の嵐が吹き荒れる厳しい時代ではありますが、こんな感じで飄々と乗り切っていってほしいものです。
気付けばこちらもかなりの長文返信となりました。
昼休みを犠牲にしての嬉しいコメントの数々、まことにありがとうございます! またいつでも遊びにいらしてくださいね~(´▽`*)
あ、美術学校時代のエピソード、本当にエッセイにして書いてくださったりしないかなあと、心ひそかに期待しちゃったりして。
それではまた~♪
イェルクとティルの話は、また読んでみたいと思っていたので、このように続きを読めて嬉しく思います(*´ `)✨
実際にあった歴史的背景をベースに、イェルクとティルを通して活版印刷について語られていくのが興味深く、面白かったです。
他の方も書いていらっしゃいましたが、私もイェルクとティルの続きが気になります。
彼らがどんなふうに、活版印刷の仕事をしていくのか、どんな仕事を請け負うのか、読むことができたら幸いです。
作者からの返信
彩霞さん
お読みいただき、ありがとうございます!
彩霞さんに続きを読んでいただけて、嬉しいです♪
続き、幸いにして読みたいとおっしゃってくださる方もいらっしゃるので、また何か思いついたら書きたいなあと思っています。
でも、本文中にもあるように、たぶんしばらくブラブラ物見遊山の旅をしていて、仕事はなかなかしないかもしれません(笑)
だとしても、せっかく印刷業界の話にしましたので、印刷に関わる風景はなるべく出したいかなあと思います。
嬉しいコメントをありがとうございました(*^-^*)
編集済
中身の乱れた聖書を悪魔の家にするというのが、その時代の聖職者を風刺しているように思えて面白かったです。痴愚女神を思い出しました。
これも一話目を読んで思った事ですが、ティルがイェルクの日常の中に普通にいて、ティルが悪さしてもイェルクは邪険に扱ったりはしない。イェルクは単に優しい人物かというと、そうではないように思えます。上手く言えませんが、あまり見たことのない関係の描かれ方で私には新鮮でした。
イェルクの日常から見える時代の変化の兆しというか、物語は明るく描かれていながらも、この時代の不穏な雰囲気が出ていて凄いなと思いました。
作者からの返信
本居さん
お読みいただきありがとうございます!
『愚神礼賛』も同時代の教会批判の書物ですので、(そして作者としては戯れに書いたユーモア小説の類いのものなので、)聖書に悪魔が棲んでしまうという倒錯的な設定に、通ずるものがあるのかもしれません。古典名作を引き合いに出していただき、光栄です(^^)
イェルクにとってティルは、おっしゃるとおり日常に普通に存在するものであり、時には友人、時には仕事の邪魔をする面倒な奴です。昔馴染みの悪友のようなものでしょうか? 悪魔だからといって騒ぐわけでもない、さっぱりしたところが、ティルに気に入られる要因だったのかもしれませんね♪
この時代は確かに教会が分裂する不穏な時代ではありますが、個人的には、キリスト教信仰の面でも人間が多様性を獲得し始めたエネルギッシュな時代であり、残酷な側面はあれど、新たな価値観を生み出そうとしているのだから、本質的に前向きだったのだと考えています。
後の三十年戦争が本当に暗く残酷で、宗教の名において人間のあらゆる暗黒面が吹き出すような醜悪なものでしたので、余計にそう思うのかもしれません。
なので、私のこの時代に抱く、比較的明るいイメージが作品にも反映されているのかもしれません。
そうした作者の雰囲気まで感じ取ってくださって、ありがとうございました!
緻密に造られた背景に支えられ、キャラクターの心や言葉が醸しだすやさしい雰囲気に満ちた、鐘古さんらしい作品ですね。
16世紀(?)ドイツ、宗教改革、活版印刷といった舞台の上を、イェルクとティルが目一杯うごきまわっているようで微笑ましくなります。
にしても、よりにもよってこの時代に「悪魔」と旅をするのは危険ですよね……。
作者からの返信
武江さん
またもや素晴らしいレビューをいただき、ありがとうございます!
宗教改革と活版印刷、まさに世界観の柱である二つを切り取っていただけて嬉しいです(*´▽`*)
16世紀で合っています♪ やさしい雰囲気と言っていただけて嬉しいと同時に、もし武江さんが同じ題材で書かれたら……と想像してみました。
うん。きっと本格的な悪魔描写に、震えがくること間違いなし★
>よりにもよってこの時代
まったくおっしゃるとおりです……!
意外とイェルクが飄々としているのが救いですね(笑)
お読みいただき、ありがとうございました(^○^)
わー、楽しい♫ 依頼主の原稿を汚しちゃったら大変ですね。そりゃ悪魔に魂を売ってでも何とかしたくなるよなあ……と思いましたが、実は出まわったら困る類のチラシだったのが面白いです。
ティルとイェルクの冒険、もっと読みたくなりました。
作者からの返信
圭以さん
楽しんでくださって、良かったです!
今と違って元データなんて残ってないだろうし、依頼主の原稿……シャレにならないくらい怒られますよねー(;゚Д゚)
助けてあげたらそれが元で困ったことに……という、ドタバタ劇のわりと定番かな? と思われる路線を攻めてみました(≧▽≦)
もっと読みたいと言っていただけて、嬉しいです!
実は当時の印刷工の遍歴職人の服装がわからなくて困っているのですが(大工とか有名どころはわかる)、そこにはいっさい触れないまま続編を書くチャレンジをしようかな(笑)
お読みいただき、ありがとうございました♪
いやいやいやいや、完結済はもったいないですよ^^;
本とティルの設定が抜群に面白いです。
旅の途中、色々とトラブルに巻き込まれ、それを解決していく物語プリーズ。
ちなみに、ティルのことを忘れているとか、意外と冷たいイェルクのキャラが、また最高です^^
作者からの返信
イルカさん
続編希望、ありがとうございます!
あまりウケない時代背景だろうと思っていたので、とても嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ
イェルクは柔らかい物腰の好青年と見せかけて、意外と塩対応ですよね(笑)
「はー、やっとしがらみの多い故郷から出られたな。あんまり真面目に仕事やってると、うっかり親方の娘と結婚させられたりするし、しばらく自由にぶらぶらしよっと。一人旅さいこー♪ おや、何か忘れているような……」(映像に被せてずっと聖書の中からノックする音)
続編きっとそのうち書く気がします(*^▽^*)
これ、原稿にティルが加えた一文、ますますイェルクが疑われそうで、
まずいかも(笑)
でも、悪魔が聖書を棲みかにするってちょっとおもしろいです。
悪魔であれ、神様が作り出したもの。
ある意味、悪魔は神様の一部なのですね。
作者からの返信
ポンポコさん
的確なツッコミをありがとうございます✨
このお話は「それでいいんかーい」と読者様が思わずツッコんでくださるような、基本ボケ倒しの、ナンセンスな方向性を目指しています♪
>ある意味、悪魔は神様の一部
まさに!
実は、神学的に突き詰めた話をすると、絶対的に糾弾されるのは「悪魔崇拝者」や「魔女」であって、悪魔ではないとどこかで読んだ覚えがあります。悪魔は聖書にも記述があるので、神様に認められた存在なんですよね。鋭い視点、ありがとうございます!
おおおぉ、まさかの続きでした! やっぱりいいコンビだー♡
もうこれ、シリーズ化しちゃいましょー☆(≧▽≦) わざとインクをこぼして消されたダイイングメッセージを読むとか、古典的なミステリ風味も合いそうな気がします!(個人的趣味と願望)
古典ミステリといえば、ブロ子さんがヴァン・ダインのようとコメントされてますね! こよみさんは読んだことがないとおっしゃってますが、古いのでミステリヲタじゃない限り、読んだことある方はあまりいないと思います。あ、だからテディは愛読者ですよ☆ 〈THE LAST TIME〉で、彼は『グリーン家殺人事件』を読んでいました(笑)
さらに続きが読めることを楽しみにしています。おもしろかったです!
作者からの返信
千弦さん
続きを読んでくださって、シリーズ化希望まで、ありがとうございます!
>わざとインクをこぼして……
Σ(゚Д゚)
な、なんですかーその、素晴らしいアイデアは!!
確かにインクの使い道、工夫すればいろいろ思いつきそうです。ミステリと相性良さそうだなあ。お陰様で続き、何か書けそうな気がして参りましたよ☆
ヴァン・ダインは古い作家さんなんですね。テディが愛読していたとは! これはもう、読まないわけにはいかないではないですか!
『グリーン家殺人事件』、どうやら創元から新訳も出ているようで、ちょっと図書館で探してみます♪
一般的にはとっつきにくい時代背景かなと思うので、おもしろいとのお言葉、とっても励みになりました(*´▽`*)
また続きをポロッと書いたら、読んでやってくださいませ~♡
鐘古こよみ様
これよ、これ! 安定の面白さ & 巧さですよ。
こよみ様、キレッキレでございますね。そこはかとなく漂うペダンチックな雰囲気が何気にS・S・ヴァン・ダインを彷彿とさせます。ちなみに、こよみ様が大学時代に履修していた第二外国語は、ずばりドイツ語とお見受けしました。
ティルかわいい! でも見かけによらず魔力はS級ですね。
イェルクとティルのコンビ、もはやブレイクの予感しかしません。これからどんな活躍をするのか超楽しみであります(^^)v
こよみ様、ブロ子復帰しました。
(返信を書き終えたところでベルに更新の通知が来たので跳んで参りました。こよみ様のこちらの御作が復帰後の初読みです)
温かいコメントもありがとうございました。
作者からの返信
ブロ子さん
うわああああん! ブロ子さん、この名を文字で打てる日が再びやってくるなんて!! いま、本当に嬉しくて泣きそうです(ノД`)・゜・。
ブロ子さんがカクヨムに帰っていらっしゃる日を、今か今かと待ち望んでいました✨ 心からのお帰りなさいませを言わせてください!
しかも、復帰後初読みが本作とは、大変な栄誉を頂いてしまいました……!
三題噺の締め切りが今回だけたまたま23:59だったので、頑張れば間に合うんじゃない!?と思って滑り込んだのです。頑張って正解でした。
近況ノートの返信の方も読ませていただきましたよ♡
あんなにたくさんの返信を打って、ヘトヘトでしょうに、すぐにこちらに飛んできてくださって、熱いコメントまで! 改めて、本当にすごい方だと感服し、感謝の気持ちでもう胸がパンパンです( ;∀;)
また変わらぬ楽しいお付き合いを、よろしくお願いしますヾ(≧▽≦)ノ
作品、大急ぎで書いたので、説明不足とか粗が目立つかもしれないなあと思っていましたが、楽しんでいただけて良かったです♪
キレッキレなのはブロ子さんのコメントの方ですよ!? S・S・ヴァン・ダイン……すみません、読んだことがなかったです。勉強して参りますーッ!
あ、第二外国語はですね、実はアラビア語なんです。ドイツ語は一度も習ったことないのに、確かにそんな雰囲気を漂わせていますね。神聖ローマ帝国が好きなものでつい……(∀`*ゞ)エヘヘ
こちら、連載にする勇気がなくてまた完結にしてしまいましたが、ネタを思いついたら続きを書かせていただきますね♡
久しぶりのコメント、とっても嬉しかったです!
復帰してくださって、ありがとうございます\(^o^)/
てるる様の近況ノートから参りました。
イェルクとティルの続きが読みたくなりますね。
時代背景や文化などの知識が豊富でいらっしゃいます。
キャラクターに魅力のある物語でした。
素敵なお話を読ませて頂き、ありがとうございます。
作者からの返信
めぐるさん
てるるさんのあの素晴らしい近況ノートから!
嬉しいです、ありがとうございます(*´▽`*)
イェルクとティルのキャラクターにも魅力を感じてくださって、続きを読みたいとのお言葉、励まされます✨
一応完結済みにはしているのですが、隙あらば続きを書こうと狙っているのです。なかなか隙が見つからないのですが、何かの拍子に更新した時には、ぜひまた覗いてやってください^^
こちらこそ、お読みいただき、ありがとうございました!