カフカ

惟風

カフカ

「嘘だろ……マジぐちゃぐちゃじゃん……」

 チョー吐きそう。


 来月、アタシと彼氏それぞれの家族同士で顔合わせをすることになった。ちょっとした料亭でお食事会。

 あんま仲良くない姉貴を連れてくのはマジで気が進まなったけどそうも言ってらんなくて、それなりのカッコして出てよって言った。

 オタクで陰気なお前でも、それっぽいワンピースか何か着たらマシに見えるから、当日は黙って座っとけよって。

 そしたら姉貴のやつ、自分の部屋から出てこなくなった。

 大方、妹のアタシが先に結婚するのが気に入らないとかそーいうのが理由じゃないかな。くだらなすぎるんだけど。

 顔合わせの日にまで引きこもりになられたらとんだメーワクだから、アタシは無理やり部屋に入った。

 久々に覗いた姉貴の部屋、見事に汚部屋でぐっちゃぐちゃ。ホコリも生ゴミも一緒くたで臭いもヤバい。オエ。

 てか、姉貴いないじゃん。どこ行った?

 とりあえず窓開けて、ついでにクローゼットも開いた。


 中で、姉貴が首吊って死んでた。

 もー色々タレ流しでサイアク。死ぬ時までダサい服着てるし。

 ま、これでお荷物が片付いたかな。後片付けママに頼もっと……て、あれ?


「何コレ」

 ぶら下がってる姉貴の左腕に、赤い文字がいくつか見えた。刃物か何かで肌に彫ったみたいな感じ。死ぬ前に自分でやったのかな、キモ……。

 “呪”て書いてるのだけ、はっきり読めた。他の文字はぐちゃぐちゃで見づらい。何て書いてんだろ。


「カ……フカ……?」


 口に出した瞬間。

 物凄い力で、アタシは床に叩きつけられた。

 「ちょ……何!?」

 姉貴の着てるTシャツから、黒いモヤモヤしたものが煙みたいに出て来て、部屋いっぱいに広がった。


 サメの大群だ!

 それはイタチザメ、ジンベエザメ、ノコギリザメが印刷されたTシャツだった!

 カオス・シャークだ!



 アタシが最期に見たのは、姉貴の腕に彫られた“禍鱶カフカの呪い”の血文字だった。

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カフカ 惟風 @ifuw

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