とある「ぬいぐるみ」の敗北

かみさん

とある「ぬいぐるみ」の敗北




 俺の名前は「たま」

 こんな名前だが、オオカミのぬいぐるみだ。


 なんでぬいぐるみが喋れてるのかだって?

 俺も知らん。気付いたら喋れてた。


 そんなことはどうでもいい。これを見てくれ。


「今日はあっくんと遊んできたんだぁ!」


 可愛いだろ? 俺のご主人様だ。

 活発なおめめに、にこやかな笑顔……最高だろ?

 俺は彼女に抱き上げられているこの時間が至福な時間なのさ。


 ちなみに「あっくん」はご主人の幼馴染……俺のライバルさ。

 俺とあいつは彼女の時間を取り合う宿敵……永遠の敵だ。


 毎日のように二人で遊んでは、帰ってきて俺にその報告をするんだ。

 敵とはいえ、ご主人様は嬉しそうだからな。俺は綿がはみ出てしまいそうになりながらも、それを堪え、彼女の笑顔でその傷を癒すんだ。


 幼馴染か……うらやま、ゲフンゲフン! 恨めしい……。


 お前たちに話したのは他でもない。あのにっくき「あっくん」をどうしたら成敗できるか考えて欲しいんだ。

 人間の中には綿がないから、取り出してやることも出来ない……まあ、はらわたはあるらしいけど、それ出したら死んじまうらしいからなぁ……それだとご主人様が悲しんじまう。


 なあ、どうすればいいと思う?


 日に日に二人の仲は近くなっている。

 まあ、俺はいつも抱き上げてもらっているから、距離はゼロなんだけどな。

 ふふふ、羨ましいだろ「あっくん」……俺はご主人様に抱き上げられてるんだぞ。


 話が逸れた……。


 つまりだ、二人はまだ付き合ってはいない。

 だが、それも時間の問題だ。


 だからお前たちに相談しているんだ。

 どうすればいいと思う?


 ご主人様は悲しませたくない。

 でも害虫である「あっくん」は離れさせたい。


 二人が触れ合っちまったら……ゲームオーバーだ。

 そうしたら二人の距離は急接近し、付き合いだすだろう。


 だからその前に——


「今日ね……あっくんと手を繋いじゃった……!」


 お前らもう付き合っちゃえよぉぉぉぉぉ……!!!

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とある「ぬいぐるみ」の敗北 かみさん @koh-6486

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